好々爺と云うにはあまりにも若々しく、その張りのある声と表情に接する度に、いつも清々しさと温かさを感じる。柔らかな物腰の芯には玉鋼の様な筋が通っている、とでも云うのだろうか。それは、厳父と慈父を兼ね備えたイメージだ。
今日、書家であり毎日書道展審査会員でもある山田太虚先生の個展にご挨拶に伺った。御歳七十一歳、先生の古希を記念した個展で先月の銀座展に続く札幌展である。長恨歌を題材とした作品の他、素晴らしい墨作の数々だ。
墨書には学生時代に親しんだ漢籍に取材した作品や、酒に関するものもあって少々嬉しくなってしまった。実は、新冠の合宿で私の部屋で振舞った白濁の酒は太虚先生からの頂き物。それは四国は道後の地酒で先生のお土産だ。
長恨歌は世界的に有名なのでいまさら説明の余地は無いが、源氏物語の下敷きともなった悲恋の物語である。私も学生時代に古典の恩師から暗記を挑戦してみると良いと言われたことがある。だが、しかし・・・数行で諦めてしまった(笑)。
今朝はあまり体調が思わしくなかったのだが、太虚先生にお会いしたとたん、それは消えた。ご挨拶の後、お忙しい最中ではあったが、会場中央の応接で抹茶と乾菓子のご接待を頂き、四方山話をさせて頂いた。
この残暑に、一服のお茶と涼しげな菓子、そしてなにより嬉しかったのは先生とまたお会い出来たこと、数々の墨作を時下に拝見出来たことだ。以前、阿部宗香先生に師事した折、茶の作法を少し習っていて良かった(苦笑)。
山田太虚古希記念書展(札幌展)は8月26日(日曜日)まで。大丸藤井セントラル7階で開催されている。入場は無料だが、入場時に毛筆での記帳をしなければならない。社中の欄には清心館と記せば良いだろう。
ご子息の起雲先生は私とほぼ同年代で毎日文化教書道室の講師をされている。以前、お会いした時に、私が社中を旗揚げしたら、一升瓶一本で道場の看板を書して頂く約束をしたが、それはまだ果たされないままだ(笑)。
しかし、毛筆も習っておけば良かった(苦笑)。奉納額の一つでも書けるように、これからでも挑戦するとしようか。習字は居合と良く似ているからだ(笑)。中村泰三先生も、永字八方から八方斬りの原理を自得したと言っている。
太虚先生の個展と先生が主催する書究院展の模様は本日の毎日新聞北海道紙面・辞林に掲載されている。

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