「風のひとりごと」というタイトルのブログであるにもかかわらず“風”のことを何も書いていなかったので、今日は“風”について。
3日程用事があって奈良の大蔵寺に行ってきた。
ここ2,3日急に冷え込んで、あちこちで思わぬ大雪に見舞われているニュ−スが報じられているけれど、大蔵寺もしんしんと冷えていました。
この辺りの谷は山襞が細かく、小さい谷が幾重にも重なり合い、一跨ぎ出来そうに思えるような谷が次々に現れる。
泊まったお堂も左右に山が迫り、小さな谷に面して建てられている。朝起きて物音一つ聞こえない澄んだ中にいると、ざわざわと竹藪を揺らして左の峯から風が来る。そしてそれは右の峯へと移ってゆく。風が谷を渡っているのだ。遠くの峯からやって来た風は次第に近づき、目の前の藪のゆっくり揺らしながら通り過ぎてゆく。
本当に風が見えるのだ。他には何の音もない世界。風の音だけが明るい空と色づいた木々、どこかで時折鳴いている名も知らぬ鳥の声。雲の動きが速く、太陽をさっと隠してしまうが、瞬く間に明るい光が戻ってくる。
谷をわたる風を見た。


0