国立博物館で開催中の「北斎展」に行ってきた。
平日にも関わらずかなりの入場者で人の肩越しにしか見られず、背の低い私には結構辛い姿勢を強いられた。
たまに来る展覧会より外国人の姿が多く、さすが「HOKUSAI」の人気は国際的だと感心する。しかも熱心に見入っていたり、中にはメモを取りながら見ている人もいるし、連れの人と作品についていろいろと話しながら楽しげに観賞している姿も多く、会場が活気に満ちていたのが印象的だった。ファッションや会話などから美術関係の人だろうなと想像がつくような人も多く、専門用語も耳に入ってきたり、ちょっとした非日常の気分だった。
北斎の作品といえば赤富士をはじめとする「富嶽三十六景」が有名だが、それも含めて想像よりずっと小さいのが意外だった。けれど考えてみれば、北斎の版画自体が江戸時代の出版物の挿絵として彫られたものが多いということであれば、本の大きさからして当然なのだな納得。百聞は一見にしかずだ。
そして残念に思ったのは、作品の所蔵先の多くが、メトロポリタン美術館、ベルリン東洋美術館、ボストン美術館、ヴィクトリア・アンド・アルバ−ト美術館など海外の美術館となっていることだった。それら一時の里帰り作品を含めてこれだけの作品が集められて、開催可能になったという事は国内に残っている作品だけではこれだけの企画が出来ないということなのだろう。
丁度同時に開催されている伊万里などもそうだけれど、日本の優れた美術工芸品が海外にたくさん流出してしまっているという。日本人ほど自国の伝統や文化を大切にしない国民も珍しいのではないだろうか。世界では地名などにしてもその民族の言語に直す動きが定着しているのに。エベレストだって今は「チョモランマ」という呼び方が当たり前になっているではないか。
日本人としてのアイデンティティが喪失されているような現状を何とかしなければ、と思うのは私だけではないのではなかろうか。


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