大阪における地域の名称。
僕はこの言葉を地名と呼んでいいのか、固有名詞と呼べばいいのかわからない。
大阪の生活文化から生まれた概念上の名称ではないかと思っている。
僕は正式にキタの範囲もミナミの範囲もしらない。
きっと正確な範囲なんてないと思っている。
大阪に住む人、大阪を訪れる人それぞれの概念の中に範囲が存在しているのではないかと思う。
僕が堺に住んでいた経験からみると、梅田らへんが「キタ」で難波らへんが「ミナミ」である。
大阪の南に位置する堺市民である僕には「ミナミ」の方が身近なマチであった。
ただ、僕はこの「ミナミ」という言葉の意味を正確に習ったり、人に聞いたことはない。
僕が初めて「ミナミ」という言葉を耳にしたのは中学生のときだった。
難波にいく友達が「ミナミにいく」といっていた。
たぶん、僕はそのとき「ミナミ」とはなにかと聞いていないはずである。
僕は経験の中で「ミナミ」とは、難波らへんのことだと想像し、その対義語のようなものに「キタ」という梅田らへんを意味する言葉があると認識したのだと思う。
この認識をもつまでにどのような経験を経てきたかの記憶はないのだが、堺に暮らす経験から僕の中での「キタ」と「ミナミ」ができあがった。
まさに生活文化の中から生まれた言葉なのではないだろうか。
僕はこの「キタ」と「ミナミ」以外に同じような性質をもつ言葉をしらない。
大阪を愛する僕は、そんな独自な言葉をもつマチに改めて愛着を感じるのである。

0