83歳の男性を見送った。
死亡原因はMOF多臓器不全と思う。
この方、ほんの1月前、施設に移ってきた。
小さい町だが地元の経済界に大きな功績をあげ
引退後も地域活動に力を注いでいた。
とても面倒見のいい人だっだようだ。
反面、いつもトップにいたのでほこりも高く、
多少強引なところもあったようだ。
でもいつも頼られて人が集まってくるような方だった。
(世代が違うので、私は全く知らなかったが)
施設に入る直前お会いして施設や生活上の説明をした、
いつも出来るだけ相手にしゃべっていただいて、必要な援助方法を
考える。この時にある程度性格や気質も把握できる。
しばらく話をしているうちに、「自分はこうじゃないとだめだ」
「周りが自分に合わすべきだ」
「自分は何もしたくない」 そんな方ではないかと感じてきた。
過去の例から、
他の方や施設のスタッフに相当負担が
かかりそうだと感じてきた。
施設運営や安全面を考えると入居を断りたい。
「トラブルを避けたい、自分」
断ってしまうと他に行くところがない。
「何とかしてあげたい、自分」
心の中に2人の自分がいる。
結局、いつもの「どうにかなるだろう」と入居して頂いた。
案の定、3日もしないうちにさまざまなトラブルが起きてきた。
何度か注意はさせて頂いたが、いっこうに納まらない。
加えて内臓の病気からくる脳症の症状も現れだした。
もう手が付けられない、スタッフも家族もお手上げ。
主治医からは「もっと管理の行き届く施設に転院」を勧告された。
転院するとこちらも助かる、本人も怪我などのリスクが減る。
でも外出禁止や決められた時間に食事、お風呂など行動が制限され、かえって精神的に落ち込み
重度化してしまうこともある。
生きる意欲も薄れてしまう。
「見捨てられた!」そんな気持ちも沸いてくる。
もう少しここで何とかならないだろうか?
スタッフには申し訳ないが、決められた以上のケアを頼んだ。
みんないやな顔ひとつせず応じてくれた。
「異常な行動には何か原因がある」
そう思いながら数日が過ぎた。
朝、いつも以上に体調が悪そうだ。
受診、そのまま入院となった。
その次の日はなかった。
見送ったのは、ドクターと看護師。
家族は間に合わなかった。
たった1月の出来事だったが
「もうちょっと、何とかならなかっただろうか」
悔しさがこみ上げてくる。
ただ我々は、残念がったり、悲しんだり
する余裕はない。
他に待っている人がいる。
それぞれがそれぞれの思いを胸にしまい
今日も黙々と仕事をする。

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