「田村さん、この窓から榛名山がちょとだけ見えるんですよ」
私は二階北西の窓の外を見てそう言いました。
「こっちからも見えませんかね」
田村さんは和室の窓の外を見ています。
「ええ、妙義山でしょう」
すでに上棟式のときに確認していたのでそう言いました。
「う〜ん、浅間が見えませんかね」
「え〜?見えるんですか」
「天気が良ければですけどね」
私はいくら冬晴れであっても、建物が邪魔をしてだめだと思っていました。
でも、見えたら最高です。
「田村さん、星見台からハシゴで屋根に上れませんか」
「ハシゴがなくても、星見台からそのまま屋根の上を歩けますよ」
え〜え、どうして、そんなことができるの。想像もしていませんでした。
星見台の下へ行ってみました。
ここを上って、こうして、こういって・・・と。
私たちの会話を聞いていた大工さんが、うんうん、とうなずいています。
「だいじょうぶ。行けますよ」
言葉には出していませんが、そう言っているようでした。
屋根の上を歩くことができるなんて・・・
怖いかもしれませんが、気分いいかも。
そうすれば八ヶ岳も見えるかも。