田村さんが中野建業さんへ行って木材を確認するので、
私たちも同行することにしました。
浅間山が真っ白で、北風がビュービュー吹く寒い日でした。
中野建業さんはもともと材木商を営んでいたとか。
材木置き場に連れていてもらうと、たくさんの材木が横たわっていました。
「どこからどこまでが私たちの家のですか」
そんな質問に、これはみんなそうですよ、と中野さんが言いました。
田村さんはじっくり材木を見ています。
私はただ、これがそうなのね、と漠然と見ていました。
「いい木ですね」
と田村さんの顔がほころびました。
「見てください。この年輪。しっかり詰まっているでしょう」
これは柱になるそうです。
「ここからここまでが柱、この太いのは通し柱になります。そしてこれが梁」
そんな説明を受けると、ただ横たわっていた木に親しみが湧きます。
「通し柱はどこに使うのですか」
私の質問に、中野建業の監督さんが図面を持ってきて、ここですよ、と教えてくれました。
リビングダイニングが吹き抜けになるので、その部屋を中心に通し柱を使うようです。
中野さんは、通常はこんな太くないんですよ。これだけのものを使えばしっかりしますね、と言いました。
そしてこんなに長いのは滅多に使わないそうです。
「これなんか、いいですね」
田村さんの言葉にうれしくなりました。
田村さんが角材の寸法を測ると、縦横共にだいぶ多めだそうです。
それは面を削ってきれいにすると僅かに小さくなるからとか。
中野さんがそう製材所に注文したようです。
そのうえ、プレカット工場に運ぶ前に、自らチェックをするのだそうです。
木には一本一本違う顔があります。
それぞれにふさわしい使い方をすると言います。
同じ木でも面によって違うので、一番よい面を見えるところに使う、
そんなふうに、吟味してくれるそうです。
「もし、よくないのがあったら私のところにあるものを選びますよ」
そうとも言ってくれました。
こんな手間をかけて、プレカット工場へ依頼するそうです。
それは大工さんが一本一本、木を見ながらカンナを削りノミを打つ方法に
少しでも近づけたような気がしました。
田村さんも中野さんも、ほんとうに木の家が好きみたいです。
そんな人とめぐり会えたことがうれしいです。