その3からの続き。
2日目のCloud Rest登山はきつかった。この日は参加者4人とSuzanneと僕ちんの計6人が登頂を目指した。このトレイルはテクニカルな難しさがない半面、やたら長くだらだらとした登りが続く。登りには5時間かかった。
(←Cloud Restの山頂から見た青空)
頂上からの景色はすばらしい。眼下にハーフドームを見下ろせるばかりか、望遠レンズを使うとケーブルを登る人たちが見える。
Cloud Restへの登山者は、 →続きは、行きま〜っフ、をクリック

(石英やミネラルの結晶が入り込んだカセドラル・ピーク・グラナイトという種類の花崗岩→)
ハーフドームへ登る人の100分の1もいないかもしれない。ハーフドームへ登るのは、アップダウンに紆余曲折が絡まり、ドラマチックだ。
Cloud Restへの登頂は、それほどドラマチックではないが、頂上からの景色は、ハーフドームのものからよりすばらしいかもしれない。個人的にはこっちの景色の方が気に入っている。

(←参加者にヨセミテの地質について説明するSuzanne=右)
だが僕ちんのドラマは、下山途中から始まった。トレイルヘッドまであと約2時間のところで、頭痛がしてきたことに気付いた。
5分、10分とたつにつれ、頭の内部から痛みが増してきた。軽い高度障害だろう。Cloud Restの頂上は標高約3000m。前日に3200mくらいの所まで上がっていたので、高山病は出ないだろうと思っていた。
だが甘かった。前日の高所滞在時間はわずか1時間。この日は約4時間近くを3000m前後のところで過ごしていたため、症状が出てきたのだろう。

(Cloud Restまであと4.7マイル→)
加えて下山時の後半からTシャツで過ごしたため、一時的な低体温症に陥ったようだ。高度障害は軽かったとは言っても、体感温度の狂いを生じさせたようだ。
早く下山したいあまりに水を飲むのを忘れていたため、軽い脱水症状にも陥っていたようだ。汗が出てこない。気付いたときには遅かった。消化機能が落ち込み、スナックを食べる気にもならない。
花粉症の症状がひどくなってきたので、空きっ腹に薬を飲んだのもいけなかったのだろう。参加者の手前、平静を装っていたが最後の30分が死ぬほどつらく感じられた。

(←SuzanneがFumiaki Lakeと名付けてくれた、途中にあった小さな湖)
高度障害、低体温症、脱水症状。いつも他人に口を酸っぱくして注意していることに、すべて陥ってしまった。アホだ、わたしゃ…。幸いどれも軽いので、1日たてば直る気がしていた。
だがこの考えは甘かった。なんと下山後、Suzanneが僕ちんを食事に招待したいと言い出した。前回のハーフドームでの
遭難騒ぎのお詫びとお礼がしたい、とのことだった。

(Cloud Restの頂上手前にある、がけの上の細い廊下。両側は1000mほど落ち込んだがけになっており、ここを渡るのはかなり怖い→)
お師匠様のお申し出は断るわけには行かない。
すぐにでもあったかいお茶でも飲んで、さっさと寝入ってしまいたい所だったが、自分にカツを入れてお供した。ふらふらになりながらも、飲み屋をはしごする上司に「ついていきま〜フっ」とか叫びながら後に従う部下のような気分だった。
Suzanneと行ったのは、公園東口から車で約10分の「Tioga Pass Resort」の小さなレストランだ。彼女は子供のころからここへ来ており、なじみがある。
とにかく熱いお茶をもらい、お腹を温めた。食欲があまりにないので、Soup & Saladだけを頼んだ。だがお茶を飲み、サラダを食べたところで、急に気分が悪くなった。

(←Cloud Restの頂上からは、眼下にハーフドームが見える。ハーフドーム登頂を果たした人に対して、更なる優越感に浸れる)
Suzanneに「トイレ、行きま〜っフ」とだけ力なく言い放ち、ふらふらと席を立った。ところが、ここには店内にトイレがない。なんと外に共同トイレがあるそうだ。
トイレに行きたいのか、吐き気がするのかが分からないまま、20mほど離れたトイレ方面へ向かう。遠いな〜。ここで気を抜いたら、日本男児の末代までの恥。死んでご先祖様にお詫びするしかない。
果たして僕ちんは、無事に便座までたどり着けたのだろうか。
その5へ続く。

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