リトアニア人のピアノ教師、Rのレッスンに通い始めた…とは言っても、毎週きちんと行くのは時間的にも距離的にも経済的にもちょっと負担になる。そう言うと、大人の生徒はもともと1回単位のレッスンをしているそうで、来られるときだけで良いと言う。
それなら何も迷うことはなかった。
夏休みに入った子どもたちのうち、その家にいるという巨大犬、ニューファンドランドドッグに興味を持ったフーだけがレッスンについてきた。
教えられた住所に着くと懐かしい彼女が出迎えてくれた。その息子、2年前には私と同じくらいの身長だったはずのJは13歳にして190センチ近い大男になっていた。現在革命のエチュードを練習中だという。負けてられないなあ。
ダウンタウンの大学街にあるその家は立派とは言い難かったけれど、あちこちに手を入れている最中。手作りの良さがあった。西日の当たる部屋。古ぼけた木のピアノ。木目というよりは「木で作りました」という感じの数十年経っているピアノだ。これにも目から鱗が落ちた。楽器がよくないとダメなんて言い訳なんだ、と思った。もっとも「下手な人ほど下手な楽器を使ってはいけない」とも言うから、私にはある程度良いピアノが必要なのかもしれないけれど。
熊と見間違うようなミシュクシ(?)リトアニア語でテディベアという名をもつこの巨大犬、1年前は普通の子犬サイズでまさにテディベアだったとか。信じられましぇ〜ん。同じ部屋にいるダルマインコがリトアニア語で「悪い子ね!」とか「そんなことしちゃダメ!」とか叫ぶのでインコに頭が上がらないのだそうです、ミシュクシくん。ともあれ彼とフーが遊んでいる間にレッスンを始めた。
1回、エオリアンハープを弾き終わるとRは「Beautiful!」と言ってくれた。そして「どこか痛む?」と。私の場合ピアノを弾いて痛むのはいつも手首と肘の間の筋肉、そう言うと「うーん、やっぱり肘が動いているのがちょっと気になるからそのせいかな。」と。
無理に固定する必要はないけれど肘を必要以上に動かしているらしい。むしろ手首をもっと使うように、と言われた。ちょっとやってみるがうまくできない。ピアノの場合バレエと違って注意されたことがその場で直ることはまずない。それを次の1週間かけて自分で気をつけて練習してまた見てもらう、の繰り返しだ。これが課題1。
続いて指使い。一番最後のアルペジオで4番の指を使うべき所、3番を使っているから動きづらいはず、と。全然気付かなかった。言われて何度かやってみると確かにその方が楽に弾けるかもしれない。でも練習しないと指使いを変えることもうまくできない。これが課題2。
そして技術的な注意はほとんどこれだけで終わり、あとは曲想の付け方がほとんど。フォルテの後のピアニシモの重要さ、メロディラインのつなげ方、自分ではできていたつもりでもまだまだ聞こえてこないらしい。好きなピアニストのCDをよく聴いて楽譜に印を付けていくと良い、というアドバイスをもらった。これが課題3。
最後に右手5指のメロディを際だたせる練習として、左手は普通に、右手は1拍目のメロディだけで弾かされた。これが難しいこと。今まで左手の細かいアルペジオを右手に引っ張ってもらってなんとか弾いていたのが露呈する。もちろん、ピアノの先生に見てもらうということは鏡になってもらうことだから見せてもらわなくては自分が困るのだけど、隠していた恥ずかしい部分が見事にばれてしまって情けない。練習あるのみ。これが課題4。
これらの課題がクリア
されればエオリアンハープはほぼ完成ということで良いみたい。来て良かった。だけどTutorをしてくれたIの時も、また別に一度ちょっとだけ見てもらったときもそうだったような気がするけれど、こちらでは伴奏の
音の粒を揃えるという、たぶん日本で今まで習ったどの先生も非常に重視したポイントがほとんど指摘されないのはどういうことだろう。私の疑問を見透かしたようにRは「メロディ以外の部分のテクニックについてはそれほど問題じゃない。特に私のプロフェッサーはそういった部分練習をばかばかしいと笑い飛ばすわ」と言った。
まず、何をおいてもテクニック!のやり方しか知らなかった私には驚くことばかり。まず音楽としての表現の後、余力があれば(?)テクニックに言及するこちらのやり方には少々不安になってしまう。ここらへんがツェルニーにこだわる自分の根本なんでしょうね。
ともあれ、次の曲として薦められたのはラフマニノフのミュージカルモーメントNo.4とプレリュードC# それからショパンの黒鍵のエチュード。う〜ん、大丈夫かなあ。かなり不安である。
次にスケールの練習をどうしているか訊かれた。スケールはいつもハノンの39番を楽譜を見ながら練習している、と答えた。「何故楽譜が必要なの?」と訊かれて口ごもる。何故って…答えは単純に覚えられないから。なのだけど、どうも覚える必要などないということらしい。
ハ長調から始めて、次は5度上げる。次も5度、また5度…と上げていけば長調のスケールはカンタンに終わる。そして短調は5度下げていく。同じ手順、と言われまたまた目から鱗だった。きちんとピアノを習い続けている人には常識なのだろうけれど、そんな基本的なことも知らなかった自分に呆れる。
そして指使い。これが覚えられなくてつい最近もネットで質問しまくったばかりだ(答えた下さった純くん、ユウさん、どうもありがとう)。ハノンのスケールに出てくるような指使いは基本なので楽譜通りに弾くべき、というのが共通したお答えだった。そうなのか、と思ってここしばらくはひたすら楽譜とにらめっこしながらスケールを弾いていた。でもやっぱり覚えられない。
すると、Rは「カンタンなのよ。いくつか例外はあるけれど、黒鍵を含むスケールのほとんどは同じ運指」と言って規則性を教えてくれた。
黒鍵は2つのところと3つのところが交互になっている。
2つの部分には2と3の指を、3つのところには2,3,4の指を置くのだ。
●● ●●● ●● ●●● ●●
23 234 23 234 23
これをクリアにすると1の指をくぐらせるタイミングがごく自然にわかる。
こんなことも知らずにン十年もピアノを弾いていたなんて!
改めて自分の基礎のなさに驚愕した。これならスケールの練習で楽譜とにらめっこする必要がほとんどなくなる!
そう感動してレッスンを終えたのですけどねぇ。。。。
家に帰ってきたらまたもやわからなくなっているおバカさんな自分を発見したのだった…。
それ以来一応まじめに練習をしているのだけど、肘を動かさないように気をつけると何もできなくなる。独学でつけたクセって恐いものですね。
日本行きでまたしばらくレッスン中断になりそうだけど、帰ってきたらまたがんばります。
文字ばかりの上にちっともおもしろくない!と超不評(家族に)の記事を読んでくださってありがとうございました。
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