ヤマタより愛を込めて

「どういうことや？」
ふたりだけのとき、そう切り出した紫穂に、葵が聞き返す。
「だってあれのあいだは皆本さんとできないのよ。なのに薫ちゃん……」
話を聞いた葵も首をひねる。
「あれだけ皆本はんのこと好きやのに、したないんかな？」
「でもローテーションは守ってる」
「透視んでへんの？」
紫穂はうなずいた。
友だちを好き勝手に透視するのはマナー違反だ。

それからしばらく。
４人のひとには言えない関係を除けば、淡々とした日々が続いた。
表向きは。
いつも通りに見える日常の影で、けれど、不安は徐々に懊悩へと深まっていっていたのだ。
「あれ、始まっちゃったみたい」
月経の開始を告げる薫のほっとした表情を、紫穂は見逃さなかった。
「やっぱり、薫ちゃんおかしいわ」

薫は薫で、自分を納得させようとしていた。
「皆本がイってくれて、あたしもイケたし。それでいいよね。挿入れてもらわなくっても」
それでも膣へのペニスの挿入をともなわないセックスは本物でないような気がして、居心地が悪かった。
というより、皆本を裏切っているような気がしてならなかったのだ。

薫がにんまりと笑顔をみせる。
「ご奉仕、うまくできたでしょ」
「……どこでそういう台詞を覚えてくるんだ……」
あきれ顔の皆本だったが、薫は意に介していないようだ。
結局その日はフェラチオだけで、膣への挿入はしないままだった。
皆本は何か言いたげだったが、自分から「いいのか？」とは聞かなかった。

薫の舌が亀頭全体をぺろぺろと舐める。
雁首の継ぎ目も舌先で丹念にこそげていく。
「ううっ、く……」
さらには、鈴口から最後の一滴までも吸い出そうとすすり上げられると、皆本のうめきは悲鳴に近くなった。
ぢゅるるるっ。
「ああああああっ！」
やがてちゅぽっと音を立てて薫はペニスを解放した。

「え……」
皆本が聞き返そうとしたときには、薫はまた亀頭を口に含んでしゃぶり始めていた。
連続の射精のあとで、さすがに敏感になっている粘膜を舐め回されて、皆本がうめく。
「うう……っ、こら、もうさすがに無理……」
「わかってるって。でも、終わったあとはちゃんとこうしてきれいにしないと……」

「平気だってば。なんでか泣けちゃって。……うれしかったのかな」
「う、うれしいって……」
皆本には意外な言葉だったようだ。
まだ整わない息で聞き返してくる。
「だって……」
萎え始めたペニスに再び口を近づけながら薫は答えた。
「皆本が射精してくれたから。知ってる？　皆本が射精してくれたとき、あたしもイっちゃったんだよ」