ヤマタより愛を込めて

「やめろ！」
皆本は呻いた。
だが、同時に頭の中で別のことを主張する声がある。
どうして躊躇する必要がある。
求めればきっと薫は応えてくれる。
喜んで応えてくれるだろう。
紫穂や葵と同じように愛してやってなにがいけない。
「やめろ」
欲しいんだろう？
薫の身体が。
紫穂の、葵の身体と同じに。

きっと薫の身体は皆本を受け入れることができるだろう。
それどころか、男の器官を深々と受け入れて快楽さえ得られるのに違いない。
紫穂や葵がそうだったように。
あの乳房を思うさま揉みしだき、艶めかしい丸みを増した尻を押し割ってその間の襞を舌でこころゆくまで舐めしゃぶったら……。

薫が寝室に帰ったあと、皆本は再び横になることもできず、しばらくのあいだぼんやりテレビの画面を見つめていた。
もちろん流れている深夜番組などまったく頭に入ってこない。
彼の頭の中に聞こえていたのは紫穂の言葉。
「薫ちゃんだって皆本さんと――」
ほんとうにそうなのだろうか？

「なんだよ、いつまでも子供扱いして」
邪険に自分を押しのける皆本に、薫は口をとがらせてふいと浮き上がった。
室内の空気が戻ってきて肌寒い。
自分でもびっくりするほどの喪失感を感じて、皆本は思わず薫を見つめてしまった。
「なに？」
「い、いや……なんでもない。早く寝ろ」
「はぁい」

皆本にしてみれば、それはもう本心を白日に晒されたようなもので、だからこそ強く否定せずにはいられない。
心の中に「もう紫穂や葵とはいくところまでいってしまったんだぞ」という思いはあったにせよ。
それでも理性はこれ以上の接触は危険だと皆本に警告していた。

「こ、こら薫……」
自分の中のよからぬ衝動から逃れたくて、皆本は薫を遠ざけようとする。
が、かえって抱きつく腕に力が込められて、いっそう乳房の柔らかさを感じさせられてしまう。
そんな彼の反応に薫がにっと笑う。
「あたしの魅力によろめきそうなんだ？」
「ば、ばかっ」

とくにこのところ目に見えて質量を増している胸の膨らみ……。
二の腕に細い腕を絡めて抱きつかれると、その量感と柔らかさを意識しないではいられない。
手のひらで包み込んだら、もう余ってしまうほど大きいだろうか、紫穂にそうしたように……。
そんな思いが皆本の身体の芯を疼かせる。