全然サイトの更新ができないので、まだ書きかけのおはなしをここにのっけちゃいます。
……続き、書きたいですよ。
■■■■■■■■■■■■■■■■
『巫女姫の守護乙女 グンオイ砦の老人たち』
【】
「どうして、この村にはおじいちゃんとおばあちゃんばかりしかいないんですかっ?」
ンクララの声はなかば悲鳴になってしまっている。
「若い者はみな戦にとられてしまった。そうでなくてももともとこの村には若い者は極端に少なかったんだよ」
村にいる老人たちの中でも一番年寄りらしい翁がそう言った。言った、といってもそうらしい、というだけのことだ。声はしわと区別の付かなくなった口の中でもぐもぐ言うばかりで、ンクララの耳でも聞き取るのが難しかったからだ。これでンカン地方のような訛りでもあったらもうお手上げだったろう。グンオイ村は聖ウラナングからそれほど遠くはない、船でくだって一日ばかりの距離にある。
実際にこの村までやってくるのには、ゴヌドイル南岸のグゾイからさらに半日かけて道を歩かなければならないのだが、それでもまだこのあたりは中央の言葉が通用している。
「そうですか……」
老人の言葉に、ンクララはがっくりと肩を落とす。
戦に取られたというのでは、仕方がない。なにしろその戦をしている当事者こそ聖ウラナングのティカン神殿なのだから。
ドゴンドイ沖の水軍戦に敗北した叛乱軍は、ゴヌドイルをのぼるのをあきらめ、大河の南岸から攻め上ってきたのだ。
まさか文明の光のとどかない南側から敵軍が現れると思っていなかったティカン側は、シュセイの戦いで敗北を喫してしまった。
勢いづいた叛乱軍は聖ウラナングを目指してグンオイ村までやってきたというわけなのである。
グンオイ村を通ってグゾイにまで攻め上られると、聖ウラナングはドゴンドイとの補給路を断たれてしまう。ここでなんとかくい止めなければならないのだ。
「そのために私が来たんですけど……」
この時代、大規模な常備軍はどの国も持っていない。
紛争は、さむらい同士の……せいぜい数百人までの規模の戦いで解決可能だった。ほとんどの戦いはそれ以下、数十人、場合によっては一〇人ばかりの集団であることも珍しくない。
また、長い出戦の場合、兵力を現地で調達するのも珍しいことではなかった。
「ここで槍兵を調達しようと思っていたのに……」
「それはもう別のおさむらいさまがやってきて、若い奴らを連れていきましたわい」
シュセイでの敗北を知ったティカンは、しかしまとまった軍を派遣することができなかった。それをするためにはドゴンドイで戦った軍勢を聖ウラナングまで……せめてグゾイまで呼び戻さねばならなかったからだ。それには何日もかかってしまう。
そこでティカンは、兵力を現地調達することにして、最速の軍をグンオイに送り込んだのである。
つまり〈クマリの鉄槌〉であるンクララただひとりのことだ。
「私ひとりでどうしろっていうの……」
〈神のささやき〉で、数百人の軍勢が低山の間をひたすら北上してきていることはわかっている。あと一日もあれば、軍勢はグンオイにやってくるだろう。

0