2004/5/2

天使のchest pain 1  

 
 眠れないので 今見ていた夢を---
 ショートストーリーです

 30代中盤の内科医は、明日の朝食のコンビニ袋を手に
真夜中、自室へ戻った。鍵を開けても、出迎えるひとは
いない。彼は独身の、淡々と仕事をこなす循環器内科医だ。
 部屋の蛍光灯の灯りは白々しくて好まないので、何か
困るまではいつもつけない。ワンルームの部屋に入ると、
大きくため息をついて肩を鳴らした。そんな医者の目が、
一点で止まった。朝開けっぱなしにしていたカーテンの窓から
差し込む街灯に照らされて、いや、自ら淡く発光している
だろうか、ふぁさと真珠色の大きな翼をベッドカバーから
出して、誰かがうつ伏せで寝ていた。巨鳥?もしくは天使?
近づくと、栗色の髪のひとがうなっていた。額には冷や汗、
美しい顔がいかにも苦しそうに歪んでいる。
「どうしましたか?」
医者は、何にも驚かない。そう訓練されている。
「胸が---締め付けられるように痛いんです...うーっ」
「いつ頃からですか?何をしている時に起こりましたか?
突然ですか?段々にですか?胸の、どの当たりがですか?
どのくらいの時間続きましたか?痛みの強さに変化はあり
ますか?このような痛みは初めてですか---」
 循環器内科医のベッドに胸痛の天使を遣わすとは神も
何を考えているんだか。と思いつつパブロフの犬状態で
胸痛鑑別のための質問を放つ。苦しげに、天使は語った。
「こんなのは、もちろん初めてです。神の賛美を唱えて
いたら、急にこの痛みが始まって。まわりの天使に運ばれ、
神の御前に---無言で神は地を差し、気づいたら雲間を
抜けてここにいました...ずっと、痛いです。」
「心電図を大至急取りに行こう!緊急カテーテルの適応
かもしれない。見た目若いけど、天使なんて年齢不詳だし」
医者は先ほどの疲れも忘れて目をキラキラさせ、よろめく
天使を支えて自分の車の助手席に乗せた。黒い、流線型の
スポーツカーが街を疾走し、医者の勤務先に滑り込む。

2002/9/16

はるかちゃん こんにちわ  

 この夏、いとこに子供が生まれて、今日会いました。

 まだ1ヶ月しか生きていないみずみずしい赤ちゃんは、
重たくて、ぬくぬくしていて、全ベクトルに柔らかな乳白色の輝きを
放って、無垢でした。

 生きていくうちにベクトルのいくつかが色づいたり、
傷がついてさらに細やかな七色の光になったりするのだけど、
1ヶ月の赤ちゃんの隣で笑っているひいおばあちゃんになった
87歳になる私のおばあちゃんを見てどちらも同じくらいすてきだ、
と思いました。

 それぞれのひとのそれぞれの時間が、幸せなものでありますように。



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