(無題)  

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2004/6/14

おなつ と おみち  


 夢を見ました
 
 
 いつかの戦後で 厳寒の地に
 生き残った二人の幼なじみの少女達

 おなつ と おみち

 2人は親をなくした幼子達を
 なんとか食事させ 親代わりをしていた

 ちなみにわたしは ぷー太郎の医者で
 それは告げず 子供の世話を手伝う代わり
 バラックに一緒に住まわせてもらっていた

 おなつは明るくて 器量よし 子供達のよき母親であり
 おみちは無口で ひたすら畑仕事をしている
 この野菜のおかげで私達は 飢えをしのげた

 ある日 おみちが子供達もそりに乗せて
 吹雪く中出掛けようとしていた

 おなつが止める

「おみち、今日は危ないわ。野菜の品評会が大事なのは、
 ようくわかるけれど、行ってはいけないわ」

 おみちは静かに首を横に振った

 おみちの横には 痩せたこの地で作られた
 大根や人参やじゃがいもがあった
 遠くの町で開かれる品評会で賞を取れば
 子供達にも服や何かが買える

 おみちは みじかく さよなら と言い残して
 雪の中に消えた

 子供の声もしない中 おなつが言った
 「おみちはね 農業大学に8年も通っているの。
  優秀な成績らしいんだけど 本人が満足しなくて。」

 童顔で大学3年ですと言うのを信じていたが
 おみちは年上だった
 無口なおみちの中に 聖女を見た
 
 
 いやぁすごいなぁ と思って目がさめた
 
 

2004/5/30

夢  

  
 夢を見た

 小高い丘の上のコンクリの収容所
 誰も知らない ここで
 過去に傷持つ医師らが仕事をしている
 ランニングシャツ姿で
 お金のため でもなく
 やりがいを持って でもなく
 大小様々な傷を共通項に
 その過去に触れることもなく
 修道院のような静かな中で
 仕事をしている

 私は去年からそこにいる
 私達の仕事というのは
 季節ごとに現れる妖怪を退治することだった
 悪さをする妖怪は
 屈強な男達が素手で倒し
 口が悪いだけの妖怪には
 何もしないようだった

 風の冷たい ある日 季節は 秋から冬へ
 急襲した円錐形の砂の妖怪を
 黒人の医師と明日のジョーのような医師が倒した
 妖怪の放つ閃光を避けつつ 私は後ろに控えていた
 3人で息を荒げながら 詰め所のコンクリの壁にもたれる
「大丈夫か?」
 明日のジョー医師が くたびれた表情のまま私に気遣う
 いつも優し過ぎるこのひとに 小さくうなずく
 少しまた 痩せたかジョー---と 胸が疼く
 
 
 そのあと来た妖怪・泥人間は
 悪さをしない常連なので
 私はホットの缶コーヒーを乱暴に渡した
「おまえはっ いつもっ 乱暴だなっ ふんっ」
 泥人間はぷりぷり怒って帰っていった
 その足取りが いつもと違う
 後を振り返ると
 黒人の医師は言った
「間違いない。右半身麻痺だ。」
 はっ として泥人間の去っていった方を見つめた
 脳梗塞を 妖怪も起こすなんて 知らなかった
 

 私は言い知れぬ思いで 心の中 叫んだ

 泥人間---!

 泥人間---!
 
 
 琴線を揺らして 切ない思いを残して
 泥人間も収容所も医師等も去った 
 夢

2004/5/6

黒衣と白衣 その1  


 主人公は、麻衣(まい)といいます。マイペースだからです^^
動きは特別鈍くはないけれど、精神の動きは極めて遅く自覚のない
マイペースです。かなり私に似た、研修医です。でも、基本的に
フィクションです。「麻衣の物語」と思って読んで頂けたら、
幸いです。
 短編小説のように長くなってしまいましたが、ごゆっくりどうぞ^^

         +  ・  +  ・  +

 精神的な動きが時速5cmくらいの研修医麻衣は、救急病院にいて
とても浮いていた。が、自ら希望し熱意で採用された病院でそれなりに
頑張っていた。まだ医師になって半年だったが、そんなひよこである
ことも忘れて働いていた。
 あんなに細かく見えていた季節も、今は春夏秋冬の4分割。
時間の流れがとても早く感じる。

 ある日、麻衣が病棟にいると緊急放送が流れた。

「ドクターブルー、救急外来。ドクターブルー、救急外来。」

 ドクターブルーというのは心肺停止患者到来の合図。
患者を驚かせないその秘密の言葉の意味を知る院内の医者が放送とともに
一気に駈け付ける。正直圧巻である。
 麻衣が着いたときには、ERに医師は溢れていた。皆うっすら
興奮している。青ざめているような人は---いなかった。
患者はこれから到着らしかった。その場の一番適した人が救命の
リーダーになり、ER勤務中の医師から情報を得ててきぱき指示を出す。

「えー50代男性、スーパーでの急な意識消失ね。来たらバイタルとって
モニターもつけて、原因は頭かな、心臓かな---血ガス・採血採って点滴入れて
胸と腹写真撮って、1年生心臓マッサージ救急隊から引き継いでね。
あとは必要なら挿管してバッグで換気だね。よし、」

 首を回したり指を鳴らしたり、これから何をするつもりなのか準備運動を
している人もいる!麻衣はいくぶん魂が離脱しているのを時々はっと戻し
ながら患者を待った。
 このときの空気は、『生死をさまよっている人が来る!』という緊迫感とは
ちょっと違う。どちらかというとキャッチフレーズは『よっしゃこい!』だ。
ちなみに麻衣のキャッチフレーズは『・・・』だ。なぜって、目の前に
死にかけた人が来るという事実をオロオロしないで事にあたるには、感情を
フリーズさせるのが一番速かった。もうすぐ来る患者を前に、場の空気を
乱さず力を合わせなければならない。

2004/5/6

黒衣と白衣 その2  


 遠くから救急車の近づく音が聞こえはじめ、ER好きな同期の真砂(まさご)君
が率先してストレッチャーの来る扉を開き、「よっしゃ、こい!」と言った。
キャッチフレーズは間違ってなかった。ガラガラと救急隊がストレッチャーを
運び入れ、急に騒がしくなる。救急隊のひとりが良く通る声で報告した。

「患者59歳男性、スーパーでの急な意識消失、我々が到着するまで初期治療
なにもなされない状態だったそうです、えー脈なし、呼吸なし。
心臓マッサージと人工呼吸続けています。」

 ワラワラと患者のまわりを医師と看護婦が取り囲む。当番など予め
決めなくても、何となく誰かが何かをし、スムーズに必要な救命措置が
とられていく。麻衣も、剥き出しになった男性の冷たい左足の付け根に
採血のために針を刺す。脈を打っていないので、心肺停止した人の動脈が
見つけにくい。しかも同期の真理子のパワフルな心臓マッサージで男性は
体ごと揺れている。難関だったが、当たった。動脈らしい鮮やかさのない
血液で自信が持てなかったが、右足でも採血挑戦中のひとつ上の先輩に
「一応、動脈血かと...」と伝える。

「おぅ、でかした。機械かけて。」

 先輩はさっさと他のことを始めた。麻衣は動脈血を機械にかけ、ガス分析を
待つ。その間にベテランの看護婦達により点滴は男性の腕と足に入っていた。
必要な薬も決められた時間毎に投与されていく。

「け、血ガス出ました。O2 54、CO2 60---」

 麻衣は声を張り上げて、そこにいる人皆に伝えた。ひとつの仕事を
終えて、髪を振り乱している真理子に声をかけた。

「心臓マッサージ、かわるよ。」

 麻衣は真理子と交替し、男性の胸を押した。もう、肋骨が折れて
いるかと、思われた。何度味わっても、変わらぬ心苦しい感触。
口元を少し歪めて、麻衣は続けた。時計をみると、もう30分近く
経っている。
 男性の顔をみる。土気色で、目は遠くを見るように少しだけ開き、
口にはチューブが入って、つながるバッグを真砂君がしゅはー、
しゅはー、と押しつつ先輩達の指示はいずれ自分がするんだという目で
一生懸命周囲を見まわしていた。
 麻衣は、押すとへこむ胸が悲しくて、いったいどのくらいの力で
押すのが正しいのか、救命のゴールデンタイムを過ぎようとしている
この男性の目に問うた。---何も返ってこない。



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