今問題になっている口蹄疫ですが,
複数の方から問い合わせがあったので,
ちょっと調べて,
下記の通り整理してみました
イノシシについては,
症状が強く出るみたいで,
キャリアー(運搬者)になることは無いようです
しばらくの間は生息数が少なくなるかもしれませんが…
ウイルスのタイプが分からないので,
なんとも言えませんが,
シカがキャリアーにならないか心配ですね
口蹄疫(FMD:Foot and Mouth Disease)とは
口蹄疫は強い感染力を持つウイルス性の病気で,家畜のウシやヒツジ,ブタ,ヤギのほか,野生の偶蹄類で発症する.その症状としては,イノシシ科の種では発熱,激しい流涎症(りゅうぜんしょう:よだれが垂れる症状),口(特に舌に現れる.時には鼻で生じることもある)や指間,蹄の周囲,乳首などに見られる液胞とその糜爛(びらん)が生じる.インパラでは発熱に伴う立毛や足が不自由となり玉子の上を歩くような歩き方になる症状も報告されている.
症状の激しさは,動物種によって異なることが知られている.ヒツジ,ヤギ,バッファローや数種の野生動物では,症状が軽くなる傾向があり,指間や口周辺の軽度な病変が報告されている.シカ科の生物では,不顕性または軽度の症状から重い症状まで種による差が激しい.例えば,アカシカ(red deer)やダマジカ(fallow deer)では軽い症状に留まるのに対し,ノロジカ(roe deer)やキョン(muntjac deer)では致命的な症状が生じる.クーズー(kudu:大型のレイヨウ)やインパラ(impala)では,臨床的に重篤な症状が生じて急速に拡大することが知られている.また,症状の程度は「ウイルスの系統」,「ウイルスと宿主の適合性」,「宿主の健康状態」によっても異なる.例えば,ある種の口蹄疫ウイルス(FMDV:Foot and Mouth Disease Virus)の場合,家畜のウシやブタで重篤化する一方で,水牛やアフリカンバッファロー,シカでは軽い症状に収まる.一般的に,水牛で重篤化するウイルスの系統は,家畜のウシに対する影響が小さく,その逆も成立する.ただし,家畜のウシやヒツジに軽度の症状を引き起こす系統のウイルスでも,ブタでは重篤化する.
ウイルスのキャリアー(運搬者)
家畜のウシやアフリカンバッファロー,水牛などは,FMDVのキャリアーになり得るが,未発症のキャリアー状態の存続期間は種によって異なっている.例えば,アフリカンバッファローは少なくとも5年間,家畜のウシと水牛は少なくとも3年間,ヒツジとヤギは最長9ヶ月,未発症キャリアーが存続することが知られている.実験的に感染させたクーズーでは,感染後ウイルスは最長136日間,抗体は少なくとも494日間検出された.一方,ゾウとイノシシ科の種では感染後のウイルス保有が確認できない(つまり,未発症キャリアーにはなれない).そのため,これらの種にとっては,ウイルスに対する抗体の存在価値が非常に高いものとなる.
サブサハラアフリカの口蹄疫発症サイクルは,バッファロー(
Syncerus caffer)の群れによって維持されていることが知られている.その群れでは,未発症キャリアーの成獣と子牛との間でウイルスが循環している.多くの子牛は雨期である夏に出生し,母親の初乳からFMDの抗体を受け取るが,その免疫力は生後5〜9ヶ月で低下する.多くの幼獣は乾期である冬から早春にかけてFMDに感染しやすくなるが,この時期は多くの野生動物が水場に集中するため,感染が他のバッファロー群に広がり,さらには同所的に生息する偶蹄類にまで拡大することが報告されている.
野生動物(野外)での発症例
1892年以前から続く南アフリカでのFMDのあるケースでは,ウシとヒツジで軽度の発症が報告されるに過ぎなかったが,アンテロープ(antelope)では個体群の2/3が死亡した.また,アメリカのカリフォルニアでは,1926〜1929年にFMDが発症してミュールジカ(mule deer)個体群の10%が感染したことが確認された.
一度,野生動物でFMDが発症すると,それは容易に他の種に伝染する.アフリカの国々では,FMDの伝染拡大を防ぐため,家畜と野生動物の直接接触を防ぐための柵の設置をしているが,実際に家畜と野生動物を適切に分離することは非常に困難もしくは不可能である.
参考文献
Pinto A. A. 2004 Foot-and-mouth disease in tropical wildlife. Ann. N.Y. Acad. Sci. 1026: 65-72.
Richard J. D., Michael R. H., and Graham C. S. 2009 Management of disease in wild mammals. 284pp. Springer. Tokyo.

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