気ままニュース153
鹿教湯温泉のクアハウスで電波がひろえたんで、
さっそくこの前の続きをアップです。
今回の北岳調査の面白かった話題をひとつ。
ライチョウの親子がどんな所を利用してるかを調べたりしてたんですが、
どんな場所がお気に入りなのか、他とどんな所が違うのかを明らかにしようと言うのが、今回の課題の一つだったんです。
もちろん、一筋縄ではいかないんですけどね。
僕は縄張り周辺の植物構成や群落の構造を調べてたんですよ。
ライチョウの目から見た構造と言えばいいのかな。

ライチョウ親子、つまり、ヒナ連れの雌がよく出没するあたりに行ってみました。
北岳山荘の近くのこのあたりでは、2組の親子をよく見かけるんですよ。
傾斜角度は30°〜50°。これ以上のところはさすがに危険すぎて追跡できませんがね。
この辺のハイマツはまだまだ元気です。

ライチョウを見つけると、ぼくたちはあとをついて行って、何を食べているか調べます。
今食べてるのは日本の野生のブルーベリー、クロマメノキの葉っぱです。
ライチョウの好物ですね。
実も好きだけど、この葉っぱを実によく食べます。

変なものも食べてます。
これはウラジロハナヒリノキ。
毒があるんですけどね、結構好きみたいなんですよ。
こんな風についばんだ跡のついた葉っぱがよく見つかります。
一体どういう好みをしてるんだか、っていうか、連中が食べても大丈夫なのがどうも解せません。

これはキバナシャクナゲ。
この木だって、毒があるはずなんだけどなぁ。
新芽が伸び始めたときに先っちょをつまむもんだから、こんな風にちぎれた葉っぱがのっこります。

こうやって首を伸ばしてるのがおかあさん。
まわりの様子をうかがって安全確保に余念がありません。
でもね、ぼくたちのことは全く気にしてないんですよ。
連中の主な敵は、なんと言っても猛禽類です。
あ、それと、口をあいてるのはね、暑くてハァハァいってるんですよ。
いや、これはよくわかります。
風の当たらない斜面は、日が当たるとホントに暑いんですよ。

前の方を歩いてるのがヒナです。
と言っても、もうかなり大きくなっているんで親とほとんど変わりません。
それにもうあんまりお母さんの言うことをちゃんと聞かないで、あっちへ行ったりこっちに隠れたり。
お母さんは気が気じゃないみたいですね。
2週間前に来たときは、母親が「クークークー」と呼ぶと、「ピピ、ピピピピ、ピピピ」とヒナも返事をしてたんですけどね。
もうそろそろ親離れの時期が近いんでしょうね。
母親は時々かんしゃくを起こしたみたいに「クークークークククク」と鳴いたりします。
これが何というか、最後の方が「トホホホホッ」と言ってるように聞こえるんですよ。
それが、おかしくってねぇ。

さて、これが今回の特ダネ。
黄色い道糸が見えますか?
親子の足取りをたどって張った物なんですがね、母親がこの斜面の下の方でひとしきりヒナに餌を食べさせたあと、さあ帰るわよぉ〜ってな調子で「クークークー」と鳴きながら、この道糸に沿って斜面を登り始めたんです。
つまり、この子たちは広大な山の斜面の縄張りの中を、毎日お気に入りのコースをかなり正確に巡っているらしいんですよ。
どうもいくつかのルートを巡回してるんじゃないかなぁ。
まだはっきりはしませんがね。
少なくともデタラメ気まぐれ行き当たりばったりに歩いてる訳じゃないんですね。
まぁ、考えてみりゃぁ、当たり前なのかも知れませんがね。