六道山公園の片隅に作った小さなトレリス。
2008年7月31日のようすです。
なかなか見事に茂ってるでしょう?
提案後3年目にしてやっと実現した物です。
と言っても、コナラ林の手入れで出たアズマネザサの茎を、交差させて建てただけですが。
このあたり、3年前まではアズマネザサやオオブタクサ、セイタカアワダチソウの2mから3m程の深い茂みで、生物相はかなり単純化が進んでいました。
それらを刈り取って、草むらの間に細々と生き残っていた食草になる植物たちが息を吹き返し始めた2年目から、本格的な選択的除草を始めたんです。
食草になる植物、これはウマノスズクサですが、こういった植物たちを刈り残すように注意していても、ちょっと目を離したスキに業者が全面刈り取りをやっちゃったりで、またまた振り出しに戻されちゃうってな事が度々。
やっぱり意図的に残しているってのをアピールした方が何かと効果的だよねってんで、こんなトレリス作りを提案していたんですが、ボランティア活動の中に組み込むタイミングを逃したりで、やっと今年の実現となったのでした。
ご存じ、ジャコウアゲハの食草です。
こんな風に立て札も立ててもらって、これなら道行く人も、興味が有れば細かく観察してくれるでしょう。
こちらは7月8日のようす。
まだそんなにツルが伸びていません。
1月足らずであんなに茂ったんですよ。
他の場所に残されている、トレリス無しで草の間にのたうってるウマノスズクサは、こんなに勢いよく伸びていません。
素直に上に伸びられるようにしてやると、やっぱり頂芽優勢が発揮されるんでしょうね。
ツルも太くて丈夫なのが、何本も伸びているのが頼もしいし、花付きも桁違いに良いですね。
じゃぁ、近くによって観察してみることにしましょうか。
これがウマノスズクサの蕾。
おもしろい形でしょ。
蕾の根元にある丸いふくらみがウマの首にかける鈴みたいだって言うんで、こんな名前になったんでしょうか?
ちなみに、「馬齢」で検索してみると、いろんな形の馬の鈴が紹介されてますが、古墳時代の「馬齢」はこんな感じだったようですね。
写真は
飛烏寺の塔の埋納物って所から借用しています。
群馬の埋蔵文化財って所で紹介されている「銅製馬鈴(どうせいばれい)」の説明をちょっと抜粋してみましょう。
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群馬県から出土する馬形埴輪にとって、鈴は必需品である。胸繋(むながい)・尻繋を中心に多くの箇所に鈴の表現が見られる。鈴なくして馬形埴輪は成り立たないと言っても過言でないほどである。
中略
本体は直径約3cmの球形で、先端には方形の吊り部がつき、下には一文字の穴があけられている。振ると、カラカラと古代の音がよみがえる。目をつぶると、つり下げた鈴を鳴らしながら馬に乗って歩を進める首長の姿が浮かぶ。
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花が開くとこんな感じになります。
全体の印象としては、馬齢とは似ても似つかないってな感じですねぇ。
もうちょっと調べてみましょう。
おっ、詳しいサイト発見!
ウマノスズクサ
ちょっと抜粋。
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「裂開した球形の実の裂片が垂れ下がっているのをウマの首にかける鈴に見立てた。実は球形で六つに裂け、裂片から柄が出て垂れ下がる。」(図説 花と樹の大事典)とのことです。単に球形の果実であるというのではなく、熟して裂けた状態が、馬の首にたくさんの鈴をぶら下げてシャンシャンと鳴らしていたことに重ね合わせてあるのです。ここが重要だと思います。伊勢の方言で「すずなり」というのがあるそうです(日本植物方言集成)が、これも、1個の鈴ではなく、多数の鈴がぶら下がっている状態を表しています。
中略
「果実がなる有様が馬の首に掛ける鈴に似ていることから名付けられたということです。」や「熟した果実が球形で馬の首にかける鈴に似ていることから『馬の鈴草』の名前が付けられました。」等は果実にポイントを置いてありますが、「裂開」については注意が行き届いていないように思われます。このような誤解は、「果実はめったに見られない」(野に咲く花 山と渓谷社)ことのほかに、川の土手や道路脇に生育することが多く、ある程度大きくなると刈り取られてしまう等で、果実を見た人が少ないのが原因ではないかと考えています。野に咲く花(山と渓谷社)には、果実の裂開した正確な図があるので、参考にご覧下さい。
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さて、僕はかつて千葉の調査地でオ
オバウマノスズクサの実が、文字通り「鈴なり」になってるのを見たことがあるんですが、鈴を着けた馬は見たこと無かったんで、まんま「鈴なり」としか思わなかったんですよねぇ。
せっかくなので、馬の埴輪に登場してもらいましょうか。
いやぁ、ネットって面白いってか便利ですねぇ。
「
はにわ人と動物たち」って言う展覧会を紹介してるページを見つけました。
飾り馬の埴輪
まさに馬齢が鈴なりに!
あとは、ウマノスズクサの実りを待って写真をアップするばかり。
A(^_^;
また一つ、楽しみが増えましたよ。
さて、花の構造をもっと詳しく観察してみましょう。
横から見ると、こんな風に斜め下向きに筒が開いています。
花の筒の中に細かい毛が生えてるのにご注目。
この方が雨なんかが入りにくいのかも。
さて、このウマノスズクサ、馬齢の部分に意外な仕掛けがあるんですね。
もうちょっと詳しく見てみましょうか。
この花を半分に割ってみましょう。
なんとまぁ、袋状にふくらんでいるところには、小さなハエが10匹近く入っていました。
よく見ると、袋の部分と花の筒の接続する境目の所に、内側に向かって伸びる毛のフサがあって、中に入ったハエたちが出られないようになっているのがわかります。
左側の花の中にある、黄色いツブツブがオシベです。
中に閉じこめられたハエに、花粉がくっついて運ばれるんですね。
実になるところは、丸いふくらみのすぐ下にくっついていた、花茎のちょっと太くなっているところです。
さて、こちらは花が咲いてからもうすこし時間が経った物。
筒の中の毛がしおれて、閉じこめられていたハエも脱出した後です。
オシベの反対側が黒くなってますね。
ここが柱頭なんです。
どうやら無事に受粉を済ませて、その役目を終えたんで、変色し始めているようです。
先ほど紹介した「
ウマノスズクサ」のページでは、この辺の下りを実に細かく観察しているので、時間のある方は覗いてみてくださいね。
さて、話しもツル草なみにこんがらがってきましたから、トレリス効果について途中経過をまとめてみましょう。
トレリス効果
1.新芽がまっすぐ上に伸びられるので頂芽優勢の効果などが働いて、ツルの成長が促進される。
もちろん花着きもよくなって、色んな生き物たちの利用が増える。
2.草むらの中にのたうっているのでは、やってきた人たちの注意を喚起しにくいし、美観もよろしくない。
けれど、きちんとトレリスに絡ませておけば、どんな植物かをアピールしやすいし、見た感じも綺麗。
しかも、ちゃんと保護してるんだよって言う、
インタープリテーション効果も期待できる。
ま、とりあえずここまで。
次に進みましょう。
あ、書き忘れがあった。
3.管理者側が業者に通達し忘れて、せっかく回復し始めた植物をうっかり刈り取られちゃうってな悲劇も避けやすくなる。
じつはこれが一番大事だったり。>汗
A(^_^;