繁殖力の強い1年生の帰化植物っていうのは、環境が悪い場所に生えた場合、ものすごく小さくてもちゃんと花を着けて、いくつもの種を作るという性質がとても強烈です。
ナガミノヒナゲシ Papaver dubium も、そんな植物の良い例だと思いますね。
ちょっと見た感じでは、全く別の種類と言ったくらいにサイズが違います。
この違いは、遺伝的な違いに因っているのではなくて、栄養状態などの生育環境の違いでただ単に大きく育ったり小さいまま花を着けたりしているんですよ。
同じ現象は、例えば、ヒナゲシの園芸品種の種やオオアレチノギクなどの種を過密状態で播いたときにもやっぱり観察できます。
ほんのちょっとでも条件の良いところに根を下ろして、早く育ち根を存分に拡げた株は、十分な大きさの花を咲かせます。
しかしそのすぐ脇で初期生長に遅れをとった株は、ミニチュアサイズにしか育てませんが、それでもしたたかに実を結びます。
しかし、
両者には体の大きさについての遺伝的違いが有るわけではありません。
その証拠に、
ミニチュアサイズの株から取ったタネをまいてみると、十分に肥料や日照などが確保できる状態で育つことが出来れば、標準的サイズの株になると言うことがわかるでしょう。
この極端な大きさの違いは、遺伝的な違いではないのです。
どんなに条件の悪い場所でも、さっさと種を着けて次世代に懸ける、そんな柔軟性というかしたたかさを持っているのが、多くの1年草の特徴でもあるんです。
種を結んでしまえば、条件の悪い場所から逃げ出すことも出来ますし、休眠してやり過ごすことだって可能ですからね。
この可塑性が、あらゆる逆境を乗り越えて蔓延するパワーのヒミツであり、初心者が植物図鑑で同定困難な状態に追い込まれる原因でもあったり。
ところで、このナガミノヒナゲシについて、べつの可塑性の側面に気がついた人って居るでしょうか?