
先日の雪に浮かれて、のこのこ御苑に繰り出してささやかな冬景色を楽しんできました。
ガクアジサイも綿帽子の花を咲かせてましたよ。
林の中で見つけたとき、ホントに白銀の華が咲いたみたいでしたね。

見なれた都市公園の木々も、この日ばかりは深山の雰囲気さえ漂わせていましたね。
えぇ、僕は冬が大好きなんです。
小学校の頃、
不快指数ってのを習ったんですが、随分長いことその数値は夏の過ごしにくさを表すものだと思い込んでいたくらい。
確か、大学になってから、不快指数が冬の寒さにも適用されると知って驚いたような覚えがあります。
そう、僕の場合、夏のジットリ汗ばむ状況は不快感そのものなんですが、冬の寒さはむしろ好もしいものだったんです。
不快指数予測
リストから都道府県の選択を行い、
次に市町村を選択すると、
不快指数を表示するサイトです。
さすがに歳をとってくると、凍てつく夜とかは骨身に応えるようになりましたが。
それとて、不快というのとはまた違うような気がしているのです。

ってなわけで、いい歳こいて、雪が降ると犬っころみたいにはしゃぎ出るアホな親爺を地で行ってる始末。
それにしても、うっすらと雪が積もっただけで、どうしてこんなに全ての物が美しく見えてしまうんでしょうねぇ?
ただ単に見なれない光景だから?
「ハレ」とか「ケ」だなんて言い出すほどではないにしても、
年に数回見られるぐらいの光景となると、やっぱり心が浮き立ってしまうのでした。

そう、これが雪国での景色じゃなくって、見なれた街の雪だから良いんですよ。

見なれたはずの見飽きたはずの物が、雪の一刷毛で普段見せなかった色香を漂わせ始める、その妙味。
単調でやるせない日々が、ひとひらの雪の魔術で白銀に彩られ煌めき始めるのを、密かな驚きを持ってかみしめる。
手垢の付いた日常だと思っていた自分の暮らしが、にわかに詩的響きをおびてくる。

こんな日は、茶室から雪を眺めながら抹茶をすするのなんてステキかも....って思ったのに、御苑の茶室はお休みと来たもんだ。
ちぇっ!無粋な....

気を取り直して散策を続ける。
と、またすぐに奇妙な物を発見。
これ、なんだと思います?
秋の菊花展の時にクッションマムを植えてた場所なんですなぁ。
秋の日射し眩い頃には、芝生に開けた丸い穴の真ん中にビッシリと小菊が咲いてたんですが、今ではそれが抜き取られて、菊と芝生の境目に生えていた雑草たちの冬芽がこんなミステリーサークルを形作っていたんです。

見飽きたハボタンも、こんな風にシャーベットのトッピングで飾られると、俄然と不思議な美しさを発揮したり。

改修工事で水を抜かれ醜い泥を野ざらしにしていた池も、雪のおかげで返って神秘的に見えたりもして。
カメラ片手に人気のない御苑をうろついていると、不意に人が現れてビックリさせられる。
見ると、その人もカメラ片手だったりする。
ショールにくるまって、傘を差して、ただ物珍しそうに雪景色を楽しむ人もいる。
「へぇ、物好きは居るもんだねぇ。」
口には出して言わないけれど、お互いそう顔に書いてあるのがわかるのか、ちょっと照れたようにあるいは幾分決まり悪そうに会釈し合う。
無邪気に挨拶の声をかけてくる人もいる。
雪が、浮き世の憂さを忘れさせるのか、世間の知らぬ喜びをかみしめ合う一体感からか、みんな邪気のない表情をしてすれ違う。
それがまたそこはかとない可笑しみを醸して、何だか身の内にほんわかと灯が灯る。
何だか得したような気にさせてくれる。

あぁ、きっとこんな日は、あの場所に言ったら素敵な景色に変わってるんじゃないかな?
ふと思いついてきびすを返す。
と、予想外に人が集まっていたりして、苦笑い。
園内は見渡す限り、人気のない荒涼とした雪景色に見えるのに、ここはと思うポイントにたどり着くと必ずと言っていいほど数人の先客が居るのだ。

みんな、都会の片隅にひっそりと咲いたはずの白銀の華を発見しようと、ウキウキしているのだ。
世の中、寒さもいとわない物好きは、まだまだ死に絶えちゃぁいないね。
そんなことを思うと、知らず知らず口元がほころんでしまうのだ。
冬が来た
高村光太郎
きつぱりと冬が来た
八つ手の白い色も消え
公孫樹の木も箒になつた
きりきりともみ込むやうな冬が来た
人にいやがられる冬
草木に背かれ、虫類に逃げられる冬が来た
冬よ
僕に来い、僕に来い
僕は冬の力、冬は僕の餌食だ
しみ透れ、つきぬけ
火事を出せ、雪で埋めろ
刃物のやうな冬が来た
(1913.12.5)
「冬よ
僕に来い、僕に来い」
あぁ、まさにそんな感じ。
東京にも、やっと冬らしい冬が来た!

さて、そんな雪の降る夜、シンと静まりかえった空気に雪の気配を感じながら、それでも窓を開け放って確かめてしまうのが勿体ない気がして、一人こんな灯りを創ってみたんですよ。
正月飾りに使った経木を細く切って貼り合わせる。
立方体の桐の土台をそのまま型にしてランダムに重ねていく。
所々、わざと隙間を残して、漏れこぼれる光も楽しめるように。

あぁ、随分久しぶりに灯りを創るなぁ。
5年ぶりぐらいかな。
昔創った作品たちの写真を、引っ張り出してきて眺めてみる。
これなんか、よく売れたっけなぁ。

こっちは、個展を頼まれたときの、主催者側が作ってくれた案内状の1枚。
懐かしいなぁ.....。
また創ってみようかな。