
去年造ったビオトープエリアです。
野生の花々だけで造ったウォーターガーデンです。
オトコエシもゴマナも去年より株がしっかりして、沢山の花を着けてくれました。
サラシナショウマやハナチダケサシも、今年は豪華に花を咲かせてくれましたよ。
今年の秋が楽しみです。
そうそう、ここで取れた種をまいて、今年はさらに新しいビオトープエリアを造りました。

ここは、先ほどのエリアより上流部に造ったところです。
池の中には水を飲みに来た鹿の足跡なんかも残っています。
水温を測っているのは
山岳環境研究所の肴倉氏。
去年の夏、どこぞの大学がうちの研究所の業績にあやかって?同じ名前の研究所を立ち上げたのには仰天しましたが、わざわざここを見学に来て褒めちぎっていったそうです。
まぁ、良しとしましょうか。
話がそれちゃった。
湧き水を貯めて造った池の水温を測って、ホタルが生息できる環境が整いそうかどうかを調べています。
もともとこのゲレンデ脇を流れていた小川には、ゲンジボタルがいたんだそうで、市の方で三面貼りに改修してからは居なくなってしまったんですよね。
仕方がないから、こうやって生息地を新たに再生というか創出するという手間が必要になったわけです。
この池の温度は上々なんですが、すぐ下流からは急激に水温が上昇して、ヘイケボタルがやっとという有様。
来年はもう少し水の流れを整備して水温を下げる工夫が必要なようです。
一度壊してしまった環境を再生するのって、なかなか大変なんですよ。

で、話しを戻して、ここは去年造ったエリアですが、今年はさらに色んな種類を追加しています。
例えば右下に見える菊の葉っぱは、アワコガネギク。
晩秋から目も覚めるばかりの黄金の花房で僕たちを楽しませてくれることでしょう。

コバギボウシの花の蜜を盗んでいる
ウラギンヒョウモン。
長い筒状の花片が邪魔して、蝶には蜜を吸いにくい花です。
しばらく花の前でバタバタしていましたが、正攻法では旨く吸えないと悟ったのか逆さまにとまって、花片の隙間から蜜を吸っています。
これだとギボウシの花は受粉してもらえずに蜜だけ盗られるんですから、迷惑な話です。
虫と植物の知恵比べと言った一コマですね。
ミソハギの花にきた
オオマルハナバチ。
ミソハギは開花期も長く丈夫なのでビオトープでは重宝します。
この株は山里のあぜ道で見つけた物を地主さんに頼んでもらってきたんですが、絶対に野生の株かというと今ひとつ確証が持てないでいます。
栽培化が進んでいる植物は、なかなか微妙ですなぁ。
オオマルハナバチを探していて、こんな下りを見つけました。
「
マルハナバチは、それぞれのハチが訪問する花の種類を決め、その種類の花ばかりを訪れます。
このことは、花にとってはありがたいことで、自分の花粉を同じ種類の他の花に運んでもらえる確率が高くなります。セイタカアワダチソウからセイタカアワダチソウへ花粉を運搬してくれるのです。チョウやハチやアブのように、どんな種類の花に飛んで行くかわからないのとは違」うんだそうです。
「
このハチは、ミツバチと同じように社会生活をする。巣は、ノネズミなどの空巣を利用して地中につくる。巣にはつぼ状の独房をつくり、そこに花粉や蜜をたくわえ幼虫を育てる。女王は夏までに働きバチを育て、秋になると新しい女王をつくる。新女王は交尾したあと、独りで地中のすき間に入って長い冬を越す。」なんてのも。
なかなか興味の尽きないハチです。

今年の夏過ぎになって、ビオトープの通路脇に
コミスジが縄張りを構えました。
どうやら、この暑さではびこった
ツルマメがお目当てなようです。
クズなどのマメ科植物を食草にしているんですね。

同様にビオトープを覆いつくす勢いではびこったツルマメの群落に居を構えたのがこの
ツバメシジミくん。
でもね、余りにも茂りすぎたんで、9月には1/10ぐらいに減らそうと思ってるんですよ。
他の草がだいぶやられちゃってますから。
紫色の花が可愛いツルマメは、
ダイズの元親なんだそうです。
これを改良して、僕たちが食べるダイズが創出されたそうなんですよ。
ついこの前、
ヤマトシジミの幼虫を紹介したばかりですが、
シジミチョウの仲間の特徴は、主にその幼生期にあるんだそうですね。
幼虫がワラジムシ型で蜜腺(みつせん)を持つことが多く、蛹は腹面をぴったりとつけた帯蛹(たいよう)なんだそうです。そう言えば、花博の時に撮った写真があったような。

さてと、もう少し水辺を散策してみましょうか。
これはまだ何という種類なのかちゃんと調べてないんですが、最近行ってきた北海道の大沼周辺にもたくさん自生してました。
牧野の図鑑には載っていなかったんで、もうちょっと別のを当たってみないとねぇ。
何だかわかります?
去年は1株だけだったんですが、今年は随分と増えて、花も沢山着いてこんなに賑やかになりました。
でも、予想に反して、キアゲハの幼虫はまだ着いていないんですよ。

これはコナギの花。
田んぼの雑草ですが、こうやって改めて見るとなかなか可愛い花ですね。

これも田んぼでよく見かけるアギナシの花。
おっと、ハナグモが不注意な虫を待ち伏せしてますね。

イヌビエの穂の上で
ナツアカネがひと休みしています。
胸まで赤くなるんで、わかりやすいアカトンボですね。

こちらはワレモコウの花を縄張りの見張り台と決め込んだ
ノシメトンボ。

そしてこれはゲレンデの立役者
ミヤマアカネ。
羽まで赤くなって、なかなか綺麗です。
去年と比べて随分個体数が増えました。
絶滅危惧種に指定している県もあるんですね。

最後は地味に、コブナグサ。
ゲレンデのしめったところに群生していた物を、新しくビオトープ化した水路脇の緑化に使っています。
まぁるい葉っぱがなかなか愛らしくて、好きな草の一つです。
あの黄八丈で有名な綺麗な黄色に染めることの出来る染料植物ですが、日当たりの良いしめった場所にはかなり普通に見つけることが出来ます。
秋の収穫が今から楽しみ。
これで今年は何を染めようかな。
コブナグサは日本中にある普通の種なんですが、やっぱりどこにでも移動して良いというわけではありません。形態的変異の大きい、だからこそ地方毎での特徴もちゃんと維持していかなければならない草でもあるんですね。
こんな研究があったので、ちょっと紹介しておきましょう。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
栽培および野生コブナグサの出穂と形態的形質にみられる変異
日本全土の野原,畦畔などに生育する形態的変異の大きいイネ科の一年草であるコブナグサは,東京都八丈島で絹織物「黄八丈」の染料用として栽培されている。栽培の影響による形質の変化を検討するために,八丈島で栽培されているコブナグサ3系統と野生(雑草)のコブナグサ11系統および近畿地方の野生のコブナグサ5系統を比較栽培し,出穂の特徴と形態的変異を調査し,主成分分析による総合的評価を行った。栽培コブナグサでは,出穂期間が短く,分げつ枝が高い同時生長性を示し,植物体の成熟の均一性が高く,種子の脱粒性が低く,葉,茎,穂などの器官が大型化する傾向にあった。八丈島の野生コブナグサは多様であったが,いくつかの形質において栽培コブナグサに似る傾向を示した。一方,近畿地方の野生コブナグサは出穂期間の著しく長い系統があり,分げつ枝の生長や植物体の成熟がばらつき,脱粒性も高く,器官のサイズが全体に小さくなる傾向にあった。主成分分析による第1主成分と第2主成分のスコア散布図は栽培コブナグサと八丈島の野生コブナグサおよび近畿地方の野生コブナグサの変異の状態を良く示し,栽培コブナグサと八丈島の野生コブナグサは部分的な重なりを示したが,近畿地方の野生コブナグサは両者と重ならなかった。八丈島の栽培コブナグサでは,出穂期間や分げつ枝の同時生長性などに栽培行為による無意識的な選択が働いており,さらに,積極的な栽培によって器官の大型化が進んだと推定された。
http://ci.nii.ac.jp/naid/110003930837/
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
ビオトープに移植するときのもう一つの注意点が、ここでもわかると思います。
えぇ、少ない個体数を移植するときに、無意識的に選抜が起こって本来の野生集団とは違ったまとまりが出来やすいと言うこと。
移植も結構デリケートな作業なんですよ。