「ターミネーター4/マックG;2009年アメリカ映画」
映画
監督がマックGということで、「
チャーリーズ・エンジェル」シリーズみたいなハチャメチャな作品になるかと思ったのだが、意外にまともというか、ターミネーター・サーガの一本としてちゃんと成立している映画になっていた。
もちろん、きちんと観ていくとおかしな点は多々ある。一番気になったのは、スカイネットが殺人リスト・ナンバーワンに挙げているのが、人類の指導者となるジョン・コナー(クリスチャン・ベール)ではなく、過去に送られ彼の父となるカイル(アントン・イェルチン)であること。タイムマシンが原理的に不可能なのは、それに付随していくつものパラドックスが生じてしまうからだが、そもそもスカイネットはどうやってカイルがジョンの父となることを知ったのだろう。直接彼を知るマシンはすべて破壊されて、そのデータがスカイネット誕生の瞬間まで保存されていた可能性はないし、抵抗軍のメンバーもその事実を誰一人として知らないはずだ。なにしろ当のカイル自身、過去に送り込まれた時点で自分が未来の救世主の父になることを知らなかったくらいなのだから。
物語のキーを握る人物、マーカス(サム・ワーシントン)の設定もよくわからない。「審判の日」の前に死刑囚として登場し、「人類の未来のため」にその体を献体するのだが、罪状からすればもっと極悪人のはず(たしか複数の人間を殺している設定だった)なのに、再登場してきたときには妙にいいやつになっていた。せっかく凶状持ちとして設定したのだから、それを生かしたキャラクターにしたほうが、自らの正体を知ったときの反応とかいろいろ面白かったと思うのだが。
以下ネタバレあり、まだ観てない人は読まないように
結局マーカスは抵抗軍に潜入させるため、スカイネットが生身の人間を改造して作り出したサイボーグであったのだが、自分自身が人間であると信じて疑わない必要があったことはわかるものの、足にエンド・スケルトン対策用の磁性地雷が吸い付いたりして、あまりにも改造が不徹底であった。これでは早晩見破られるのは間違いないだろう(で、結局人類側に寝返ってしまうのだが^^;)もし、スカイネットが本気でジョンの抹殺を計画していたなら、マーカスがジョンに接触した時点で自爆させた方が確実だ。それを避けなければならない理由が何かあるというなら別だが、本編を観た限りでは、自爆を躊躇しなければならない要素は見当たらなかった。せっかくカイルを捕らえたのにその場で殺害せず、わざわざ救出を待つかのように監禁しておくなど、どうもスカイネットのやることはいちいち不徹底というか、間が抜けている。
映画のラスト近く、スカイネットの本拠地に乗り込んだジョンの前に、その当時の最新型ターミネーターT-800が登場するのだが、その顔が若き日のシュワちゃんであった(ボディビルダーの体に顔だけCG合成)のがちょっと懐かしかった。やはりこの顔あってのターミネーター・シリーズなのだ、たとえ本人が出演していなくても。しかしこのターミネーターもまた、せっかく捕まえたジョンを放り投げたりして「殺す」意思に欠けていた。結局のところ、以前の作品で何度か登場したジョンの顔の傷の由来について、語るだけの意味しかなかったようだ。
このシリーズ、「3」を観たときに思った「ドル箱路線の宿命」をまさに踏襲しているわけだが、次第にスケールダウンし、なにかテレビシリーズでも観ているような気分になってしまうのは、仕方ないことなのだろうか。・・・
★★★

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