「タイタンの戦い/ルイ・レテリエ;2010年アメリカ映画」
映画
本編はオリジナルのギリシャ神話の映画化というより、それにインスパイアされてできた映画「タイタンの戦い」(レイ・ハリーハウゼンの引退記念作品)のリメイクと言ったほうが正確だろう。ディテールはかなり異なっているものの、基本的には同じようなストーリィ。漠然と観た感じから、まあ映画マニア受けはしない作品だろうな、とは思ったが、案の定、ネットでは酷評の嵐。気持ちは判らないでもないが、結局みんな「大人の目」でしかものを観られなくなっているんだな…^^;
僕はこの種の映画がわりと好きなので、それなりに楽しむことができた。もちろん、あまり意味の感じられないオリジナルの改変(ペルセウスがアンドロメダではなくイオを妻にしたり)は気になったし、人間ドラマとしての要素があまりに希薄だったのも減点要因。延々と猿芝居が続いて肝心なSFXが小粒になってしまうのも嫌だが、さりとて、あまりに予定調和的に話を進めてしまうと、結局は大味な話で終ってしまう。このあたり、やっぱりジョージ・ルーカスはうまかった。
さて、本編のキモであるところのSFXだが、完成度という点ではすでに完璧の域に達していると思う。たとえばペルセウスの乗るペガサス(なぜか白ではなく黒)など、ところどころ本物の馬が混じっているはずなのだが、まったく見分けがつかない。また、クラーケンの巨大さを、まとわり付く水しぶきなどを使って見事に表現していた。もし実際にあんな大きさの海獣が実在していたとしたら、大差ない見え方をしたと思う。
だかしかし、確かにリアルではあるものの、そこにはあまり感動はなかった。一言でいえば即物的すぎるのだ。いちばんいい例がメデューサというキャラクターの使い方。動きもCG臭くてもうひとつだったが、結局RPGにつきものの「アイテム」のひとつとしてしか扱われていなかった。メデューサがあのような姿になったのにはそれなりの理由があり、その悲劇性がキャラクターを浮き彫りにするはずなのに、あれでは単に動きの速いヘビに過ぎない。
ペルセウスがクラーケンを斃す手がかりを捜す旅に出るとき、武器庫でからくり細工のブーボー(フクロウ)を手にするシーンが本編唯一のお遊び。もちろん、ハリーハウゼン版「タイタンの戦い」に登場したあのブーボーである。結局彼はそれを残したまま旅に出て、画面にも二度と登場しないのだが、この映画はそれと一緒になにか大切なものも置き忘れてきてしまったようだ。・・・
★★★

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