ギャグ漫画をギャグのまま映画化することの難しさは度々いわれることだが、本編などもその好例かもしれない。過去に、「がんばれ!!タブチくん!!」や「ホーホケキョ・となりの山田くん」のように、オリジナル作品の持ち味を生かそうとする作り方を選択した作品もあることはあったが、たいていの場合、本編のように「物語性」を盛り込んで、まったくの「別物」にしてしまうのが通例のようだ。
とはいえ、本編は先の例に挙げた四コマ漫画が原作ではなく、いわゆる「ストーリィギャグ」の範疇に入る作品で、オムニバスのような形ならわりと忠実な映画化も可能だったような気はする。そうしないであえて物語性を強調したのは、先に挙げた二本が興行的に大成功とまでは行かなかったからか。それとも、わざわざ映画館に足を運ぶ観客は、一本の映画に満足できる一本の「物語」があることを期待している、という先入観でもあるのだろうか。漫画ではないが、一発ギャグで成立していたバラエティ番組を映画化し、無理やり物語性を組み込んで「別物」の作品にしてしまった「
サラリーマンNEO劇場版(笑)」に通じる発想の作品といえるだろう。
前半、主人公ルシウス(阿部寛)が紀元前のローマと現代日本をタイムスリップするくだりはほぼ原作どおりで、あちらの大作テレビドラマのセットを借用して撮ったといわれるローマ帝国のシークエンスはなかなか見事。しかし、主演の阿部寛もハドリアヌス帝を演じた市村正親も、日本人としては「濃い」顔立ちではあったが、現地で本物のイタリア人の間に混じるとやはり醤油臭さは隠せない。どうせコメディなのだから、この辺は素顔にこだわらず、眉の辺りを盛り上げたり付け鼻をしたりして、むしろ極端なくらいコーカサス系の雰囲気を強調すべきだったと思う。せめて、ルシウスの髪の毛は脱色すべきだった。
話が後半のオリジナルシナリオに突入すると、ややご都合主義が目立つだけのローマ史劇っぽい流れになってしまったのが残念。戦場近くにオンドルを作り、無理やり現代の温泉と接点を作った努力は買うが、そもそもオンドルは韓国の文化であり、日本人にとってそれほどなじみのあるものではない。原作で山賊を使い山中に無理やり湯治場を作ってしまうエピソードがあったが、そっちの方がよかった気がする。また、ルシウスが現代日本に現れたときはラテン語をしゃべっていたのに、ヒロイン山越真実(上戸彩)が古代ローマにタイムスリップしたときには全員普通に日本語をしゃべっていた(右上にBILINGUALのテロップがあったので、真実を含め全員がラテン語で会話しているのを吹き替えている、という設定だったのだろうが、そうすると、猛勉強の結果ラテン語を話せるようになった真実のみならず、後からタイムスリップしてきた館野=竹内力=ら他の「平たい顔族」たちもラテン語を話せたことになってしまう)
監督の武内英樹は、同じフジテレビ製作の「のだめカンタービレ 最終楽章」前・後編を監督した人で、バイリンガル環境での強引なドラマ展開など、手法的にも通じるところがある。コメディ映画は何よりセンスが大切なのだが、かつて日本の喜劇映画が持っていた独特のまったりしたセンスをこの先継承していけるのか、このほど同じ武内監督により続編の製作が開始された本編第二章に期待したい。・・・
★★★★

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