前作「GANTZ」から五ヵ月後という設定の続編。比較的原作漫画に忠実であった前作に比べ、ほぼオリジナル脚本といっていい展開になっている。原作は遥かに長大かつ現在も連載中の作品なので、区切りをつけなければならない映画作品としては妥当な選択だろう。
まず、いいところを挙げていこう。アクションの迫力はなかなかのもの。パワードスーツに身を固めた玄野(二宮和也)たちGANTZの戦士たちは、常人を遥かに超える運動能力を持っている、という設定だが、コマ落とし撮影やCGによるモーションブラーの追加、さらにわざとらしくないワイヤーアクションによって、なかなかうまく表現できていた。
今回彼らが対するのは、一見普通の人間と見分けのつかない「黒服星人」と呼ばれるエイリアンだが、地下鉄車両内での壮絶な戦闘シーンは本編の白眉といっていいだろう。アクションが開始される直前までの車内シーンは実際に走行している地下鉄の車内で撮影し、戦闘シーンは実物大のセットを組んで撮影したそうだが、両者の違いはまったく判らなかった。やや
マトリックスに影響されすぎた感はあるものの、和製SFX映画としてはかなりよく出来た部類といえるだろう。
アクションやSFXの素晴らしさに比べ、かなり疑問を感じたのが脚本の出来。もともと不条理きわまりない物語設定なので、すべての謎を2時間ほどの映画で解き明かすのは不可能だろうが、それにしても説明不足に過ぎる部分が多く、また、あちこちに矛盾やご都合主義が生じてしまった。
物語の後半、ついに100点を突破した鈴木(田口トモロヲ)によって加藤(松山ケンイチ)は復活するのだが、SF的に考えると二つの方法を思いつく。まず第一は、GANTZが時間を操る能力を持っている、という考え方。もしそういう力があるなら、復活すべき人間が死亡する直前に戻って現在に連れて来ればいい。しかし、そういう力があるなら、そもそも幾多の星人が地球にはびこる以前の段階で殲滅すればよく、どうしてそうしないのか説明がつかない。
もうひとつの方法はもっと現実的。GANTZは戦士たちを戦場に送り出したり回収したりする時、いったんその体をデータ化して転送しているようだが、転送時にデータのコピーをとっておけば、好きな時に再生できるのではないだろうか。しかしこのアイデアも、復活した加藤が死亡する寸前の記憶を持っていたことから否定される。もしデータを再生しているなら、戦地に送り込まれた時までの記憶しか持っていないはずだからだ。しかし、この記憶のおかげでニセ加藤の正体が実は変身した千手観音だとわかるので、ストーリィ上はずすわけには行かない。どうもシナリオライターは、そのあたりについて突っ込んだ考察をしないまま話を作ってしまったようだ。
以下ネタバレあり、まだ観てない人は読まないように
終盤に入ると、そのあたりのメチャクチャさはどんどんエスカレートしていく。ラストでは、なんと千手観音が化けたニセ加藤により斬殺されたはずの小島多恵(吉高由里子)までが復活してしまう。GANTZの人間電池(このあたりの設定にもマトリックスの影響が見られる)と化した玄野が関連した死亡者すべてを復活させた、ということらしいが、これにはかなりの無理が生じる。たとえば、地下鉄車両内で巻き添えとなって死んだ多くの犠牲者たちはどうなったのだろうか。
それ以外にも、たとえば女優、鮎川映莉子(伊藤歩)の元に届いたくろいボール(ミニチュアのGANTZらしきもの)の意味とか、西(本郷奏多)に化けてGANTZルームに侵入した千手観音がGANTZにかけた液体はなんだったのか(大爆発を起こしながらも、GANTZに傷ひとつつけられなかった)などなど、よく判らないまま終ってしまった謎があまりに多すぎた。
アクションでたたみかけた前作に比べ、いろいろネタの解説が必要な後編の分が悪いのはある程度仕方ないと思うが、それにしても今回はアクションと静的なシーンとのバランスが悪く、終盤の失速感は残念。関連した人々のその後を描きたかったのは判るが、今回ほとんど出番のなかった岸本恵(夏菜)にまで、あれほど時間を割く必要があったのだろうか。残念ながら、PERFECTと銘打つにはやや脚本の完成度が及ばなかった気がする。・・・
★★★

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