いったい何のために作ったのか、もうひとつよく判らない作品。
この作品が「
タイタニック」を撮る前に作られたのなら、資料収集という大目的が考えられるが、本編撮影中にあの9.11のテロが起きていることからもわかるように、撮られていたのは「タイタニック」封切りから四年もあとの2001年だったのだ。
撮影のために駆り出されたただ一人の俳優(他は技術者や科学者ばかり)のビル・パクストン(そういえばキャメロン作品の常連である)がいわば狂言回しとなって、タイタニック探索の旅に出るのだが、その旅の目的がもうひとつピンと来ないのだ。いちおう無人探査機ジェイクとエルウッド(言うまでもなくジョン・ランディス監督「ブルース・ブラザース」のキャラクター)を使って船内捜索などするのだが、何か特定のものを捜すわけでもなく、捜索活動そのものも漫然とした感じ。
本編は基本的にiMAXシアターなど特別な施設で3D上映するために撮影された作品であり、このときの3D撮影技術が後の「
アバター」などに生かされているのだろう。つまり、海底での活動は具体的な目的のあるものというより、捜索活動そのものを3Dカメラに収め、その映像を劇場公開すること自体が目的であったと思われる。
映画の冒頭で捜索活動の手順を説明するのだが、そのとき語られた、強力な照明でタイタニック全体を照らす、という作業がいつ行われるのかがポイントの話かと思ったら、結局最後まで登場せず、ライティングは常に深海潜水艇ミールが自前のヘッドライトで行っていた。
全体に淡々とした、盛り上がりに欠ける展開であったが、唯一緊張感があったのがジェイクとエルウッドの遭難シーン。遭難といっても、人が乗っているわけではないので、人的犠牲が出るわけではないのだが、さすが演出力では右に出るもののないキャメロン監督、こんな些細な出来事でも、いかにも重大事のように感じさせる力技には敬服する。しかし、そんな彼の手腕を持ってしても、本編の漫然とした印象を救うことはできなかったようだ。・・・
★★★

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