監督水田伸生、脚本宮藤官九郎、主演阿部サダヲというと、個人的にいまひとつ乗り切れなかった「
舞妓Haaaan!!!」とまったく同じ組み合わせである。なんだかイヤな予感もちょっとしたのだが、なによりクドカン脚本ということもあって、とりあえず録画して観た。
前半に関しては、ほとんど言うことなし(^^)ちょっと複雑な兄弟の関係も、それぞれがお互いの出生についてナレーションを行うことで、判りやすく簡潔に表現している。
兄弟の兄、下井草祐太(阿部サダヲ)は両親の離婚後、父(伊原剛志)に引き取られるも、父は勤め先の総菜屋から売上金を持ち逃げし、結局その総菜屋の家族として育てられる。やがて成長した彼は総菜屋のあとを継ぎ、亡き店主(カンニング竹山)直伝の「秘伝のソース」をかけたハムカツが名物の「行列ができる店」に育て上げていた。一方弟の祐介(瑛太)は離婚当時、母(鈴木砂羽)のおなかの中にいたのだが、小学生時代、母を交通事故で亡くし、その後親戚をたらい回しされる人生を歩んだ後、ひょんなことからお笑いタレントとしてブレイクし、今や飛ぶ鳥を落とす勢いだった・・・。
物語はそのふたりが邂逅するところから始まるのだが、それに出戻ってきた総菜屋の娘(竹内結子)とその連れ子も絡み、いかにもクドカンの脚本らしくあちこち脱線しながら(金ブラ=祐介の所属するお笑いコンビ、金城ブラザーズの略=の嘘っぱち自伝の中の、仔犬のエピソードなど秀逸^^;)展開していく。正直、「秘伝のソース」のエピソード(「腐ってる」と子どもたちに捨てられてしまう)は必要だったかもしれないが、その後の「給食のソース」はいらなかったと思うし、だいたい「なくもんか」というタイトルのわりに、やたら泣きまくる阿部サダヲにもちょっと辟易。そもそも、阿部の演じた祐太の立場は「なくもんか」と歯を食いしばらなければならないほど辛いものではなく、むしろ成功者である。
途中、空き巣に間違われるエピソードで、彼が住民たちからどう見られていたか示してはいるのだが、「その後真犯人が見つかった」であっさり〆てしまい、後日談も何もなし。あまりこういう部分に突っ込むと話が重くなりすぎるのは判るのだが、軽すぎてはそもそも挿入する意味がない。直後、物語は唐突に舞台を沖縄に移し、ややなげやりな感じのエンディングへとなだれ込む。
ラストの野外ステージのシーンはかなり痛々しい。祐介役の瑛太は「笑いの取れないお笑いタレント」という設定なのだが、演技というより素に見えるし、乱入した阿部サダヲも唐突の感は否めず、本来、祐介とコンビを組んでいた金ブラの片割れ、大介(塚本高史)のその後も不十分すぎた。ラストの阿部のひとことで〆るエンディングも、結局ごまかされ感をぬぐうことができなかったのは明らかな失敗。
せっかく凝った設定を作ったのに、最後の最後で積み上げた積み木を崩してしまった感じで、なんとももったいない映画、というのが正直な感想だ。・・・
★★★

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