仮に監督の名を伏せられても、即座に誰の作品か判ってしまうほど紀里谷色が濃厚に漂う作品。絵作りはいうに及ばず、演技の付け方からアクションの不自然な「間」まで、なにもかもいちいち監督のサインがあるようだ。
唯一前作「
CASSHERN」との違いがあるとすれば、それは脚本。もちろん、まだ上手とはお世辞にも言えないレベルではあるが、少なくとも前作の独りよがりな難解さ(単に舌足らずというか、説明下手なだけだと思うが)は影を潜め、少なくともどういう話かはちゃんと理解できる作品になっていた。素人監督にしては、やはり大きな進歩といわなければなるまい。いうまでもなく、「素人としては」というレベルであって、プロとして胸を張れる水準にはまだまだだが^^;
お話はいちおう安土桃山から江戸時代にかけての史実を元にしてはいるが、冒頭に登場する城や町並みの日本離れした風情からしてすでに支離滅裂であり、八切止夫もびっくりの「意外史」ぶりである。家父長といったイメージの信長(中村橋之助)、権謀術策の男秀吉(奥田瑛二)、ひたすら凶悪な三成(要潤)そして温厚そうな家康(伊武雅刀)などなど、役者は揃えているのだが、例によって匙加減がまずく、利休(平幹二朗)の扱いのいい加減さなど、もはや侮辱に近い。そして肝心のヒロイン茶々(広末涼子)にまるで魅力がない。同じアホ映画でも、「
バブルへGO!!」に出演していた時の広末と同一人物とは思えないくらいだ。
前作より退化したというか、意図的なのかもしれないが、登場人物の肉体の動きが以前にも増して不自然になったのはちょっと気になった。たとえば主人公ゴエモン(江口洋介)が超人的なスピードで走るところなど、動いているのは下半身だけで上半身はブレすらほとんどない。
紀里谷監督の頭には、おそらくエイトマンのイメージがあったのだろう、と勝手に解釈していたのだが、考えてみれば彼の年齢でアニメ版エイトマンをリアルタイム体験しているはずもなく、こちらの穿ちすぎかもしれない。走るだけではなく、ものすごい高さの天守閣を一気に跳ね昇る(適切な日本語が見つからない^^;)シーンにもほとんど「肉体感」を感じられず、そもそも始めからそうしたモノを表現しようという意志がなかったのかもしれない。
その動きは同様にCGで描かれた「
スターウォーズ クローンウォーズ」に登場したジェダイ戦士にも似ていた。あれは普通の演技シーンも100%CGで描いていたからまだしも、とても生身の人間とは思えない不自然な動き(1Gの重力下の動きではない)のあとでは、いかに江口が説得力溢れる演技をしようとも、結局のところすべて絵空事にしか見えない。
もちろん、絵作りからして最初から「絵空事」を狙った作品なのは判るのだが、完璧に空想の世界だからこそ守らねばならない「お約束」もまたあるはずだということを、紀里谷監督もそろそろ学ぶべき時に来ているのだろう。・・・
★★★

1