CM界出身で「下妻物語」や「嫌われ松子の一生」で特異な映像作家の地位を築いた中島哲也監督の最新作。前作にも増して特殊効果満載の、SFX超大作である。
舞台はとある病院、そこに入院していた大貫(役所公司)は一代で大企業を成した立志伝中の人物だが、その高慢な態度で入院患者たちの嫌われ者だった。そんな彼の前に、パコ(アヤカ・ウィルソン)という奇妙な名の少女が現れる。ちょっとした誤解がもとで彼女を殴ってしまう大貫だったが、あくる日まったく何事もなかったかのように振舞うパコの態度を変に思った彼は、主治医である浅野(上川隆也)から驚愕の事実を告げられる。パコの乗った自家用車が事故で水中に沈み両親は死亡、パコも脳に深刻なダメージを受け、一日しか記憶が持たない体になっていたのだ。
パコという少女の存在によって次第に人間らしい気遣いを取り戻していった大貫は、病院の恒例行事である「サマー・クリスマス」の出し物として、パコが愛読していた絵本「ガマ王子対ザリガニ魔人」を入院患者たちで演じることを提案する・・・。
こうやって荒筋を記してしまうと、いかにもお涙頂戴の安っぽい物語みたいだが、中島哲也監督はこれに強烈な人口甘味料的な色彩とあくの強いギャグをまぶし、ともすると感傷的な方向に走ろうとするストーリィをすんでのところで引き止めていた。
しかし、本編独特の濃い乗りに付いていけないと、ちょっとつらい部分もところどころ目に付いたのは減点対象。CG映像と患者たちの演技のシーンとがつぎはぎされたような演出は、本来の観客であるはずのパコに向けられたものというよりは、どうしても映画館の観客に向けたものとしか思えず、そこからは映画スタッフの努力は伝わってきても、患者たちのパコに対する思いはあまり伝わってこなかった。
最後の最後にあるどんでん返しは伏線がやや弱く、ちょっと唐突に感じるが、観終わってみればやはりこれ以外の終り方は考え付かず、まあ順当というところなのだろう。・・・
★★★

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