なぜ今「エヴァ」なのか、という疑問は実際観るまでの間、ずっと付きまとっていたのだが、やはりこの作品がリメイク(製作側はリビルドという言葉を当てている)されるためには、10年というインターバルが必要だったのかもしれない。
基本的にはテレビ版の序盤、第6話までのダイジェスト的な展開だが、コンテや原画を一部流用しているものの、作画はすべて新規に描き起こされ、すべてのカットが劇場版のために新たに撮影されている。特に「使徒」の描写は、3DCGの多用でかなりアップデートされた感じ。いっぽう、人物描写は基本的に原画が同一なため、ともすると10年前のテレビ版をそのまま再編集したような印象を受ける部分もあるが、実際見比べると画面の情報量や動き(の滑らかさ)がまったく違っていた。要するに、とても贅沢なリメイクなのである。余談だが、
Zガンダムのリメイクも、せめてこれくらいのグレードは保って欲しかったものだ。なにしろジャンルを背負って立つ看板ソフトだったはずなのだから。
話を戻して、「エヴァ」オリジナル・バージョンでは、特に終盤に向けて話の無理が目立ち、
映画版は消化不良のまま観客に投げつけるような無様な終り方だったのだが、これをどうやって補修するのか、あるいは結局恥の上塗りで終るのか、現状では見当もつかない。ただ、いろいろ細かい設定が変更されており、たとえば、終盤ようやく出番の来る渚カヲルが早くも登場していたり、当初「アダム」と呼ばれていた第二使徒リリスが、今回は本来の名前で出てきたりと、唐突に思われた部分への伏線は以前より周到に張られていた。
個人的には、シンジがエヴァに乗る決意をするまでの描写が短すぎ、全体とのバランスがやや悪いように感じた。上映時間の制限もあるので仕方ないといえば仕方ないのだろうが、それをも承知でもう少し引っ張ってもよかったような気はする。全編でほぼ100分程度という、けして大長編というほどの長さではない作品なのだから、あと10分くらい増やしてシンジが乗り込むまでの描写に当てても、たいした問題ではなかったのではあるまいか。「エヴァ」なんだから、もう少し観客をイライラさせても、誰も文句は言わないって^^;
シンジが乗るようになってからの展開は、テレビ版でも傑作の誉れ高いシークエンス(「ヤシマ作戦」etc.)であり、新たな演出も10年分のテクノロジーの進化を十分盛り込んだ出来で、まったく文句はない。続く「ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破」も公開されているが、これなら劇場に足を運ぶ値打ちは十分あるだろう。・・・
★★★★

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