とにかく揺れる揺れる、揺れまくる。映画館や大画面テレビでは、下手をするとマジで映像酔いしてしまいそうだ。緊張感あふれる演出が必要なアクション・シーンならそれもありだが、本編では何気ないレストランでの会話シーンや、CIA本部の作戦司令室のシーンまで揺れている。ドキュメンタリー的迫力を演出したいという意図なのだろうが、これはちょっとやり過ぎ。落ち着いたスタティックなシーンがあるからこそライブ感あふれる「揺れ」シーンが生きるのであって、のべつこれをやられると逆に感覚が麻痺してしまう。監督が手持ちカメラにこだわりたかった気持ちは判らなくもないが、何事にも限度というものがある。
本編は「
ボーン・アイデンティティー」「
ボーン・スプレマシー」に続くボーン三部作の完結編(ただし、原作には別の続編があるので、さらに続く可能性はある)である。ストーリィの骨格はすでに前二編でかっちり定まっているので、今回はそのレールに乗ってただただ進行し、ネタに関する意外性は皆無、観客は結末に向けて超高速で突っ走るジェイソン・ボーン(マット・デイモン)の大活躍をひたすら見守るだけでいい。
映画公開中、主人公ボーンが隣の家の窓に跳びこむカットがTVスポットで盛んに流されたが、本編ではそうした生身のアクションシーンが満載で、その激しさ加減は前作のさらに1.5倍強といったところ。それはもちろんいいのだが、おかげで割を食ってしまったのがCIA側キャラで、ボーンの超人的活躍を見せるというただ一点に奉仕する存在に成り下がってしまっており、そのマヌケさ加減はこのジャンルの映画でも一、二を争う酷さだ。特に局長ノア・ボーゼン( デヴィッド・ストラザーン)のバカさ加減はもはや犯罪的といっていいほどで、これほど頭の切れない人物が指揮するCIAという組織自体、かなり危なっかしい^^;
以下ネタバレあり、まだ観てない人は読まないように
映画後半の腰砕け感はやはり敵側のキャラの弱さに起因するのだろう。最後の謎解きも大方の予想通りというか、それをも下回る意外性のなさで、そんなのは第一作「ボーン・アイデンティティー」から判っていたことではないか、と突っ込みを入れたくなってしまった。ただ、それでは他にいかなる種明しがあり得るか、と問われると、たとえば「トータル・リコール」みたいな自作自演タイプしか思いつかないが(;o;)
本編中、ボーンは二人の殺し屋と対峙することになるのだが、それぞれへの対処の仕方の違いがボーンの「心の変化」を端的にあらわすことになる。しかし、前述のように敵側の描写があまりに雑なため、二人目の殺し屋にボーンがいう台詞にあまり重みが感じられなかった。本来ならここが「感動しどころ」と思われるのだが、やはりこの監督、心理面の演出はあまり得意ではないらしい。・・・
★★★★

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