監督はテレビ界出身だそうで、言われてみれば確かに速いカットの積み重ねや、手持ちカメラを多用した揺れ動く絵作りなど、最近のアメリカ製テレビドラマの特徴が見て取れる。家庭のテレビサイズならまだいいが、劇場の大スクリーンだと酔ってしまいそうだ^^;
IMFのベテランエージェント、イーサン・ハント(トム・クルーズ)は医師であるジュリア(ミシェル・モナハン)と婚約したのを契機に現役を退き、現在は教官の職に就いていた。そんな彼の元に、かつての教え子リンジー(ケリー・ラッセル)が初任務の最中に拉致されたとの情報が届く。本来使い捨てが鉄則のスパイだが、彼女はターゲットの武器ブローカー、ディビアン(フィリップ・シーモア・ホフマン)を有罪に追い込める情報を握っており、その救出作戦が立案される。そのリーダーとして白羽の矢が立ったのが、元教官のイーサンであった・・・。
冒頭に中盤の山場を持ってきて、そこから過去に戻り「そもそも」と語り始める構成は、かつてのアクション大作ではよく用いられた手法だが、最近とんと見かけなくなっただけにかえって新鮮だった。アクションはあまりCGに頼りすぎず、主に肉体を使って表現する「
ボーン・アイデンティティー」風の演出で、この作品がスパイアクションというジャンルに与えた影響の大きさが伺える。
二転三転するシナリオはなかなかよく練られてはいるものの、わりと早い段階で黒幕が判ってしまう(正体が露見するシーンでは思わず「やっぱり^^;」とつぶやいてしまった)など全体的にやや捻りが足りず、畳み掛ける展開でごまかそうという意図もちょっと感じられた。また、ディビアンがイーサンの婚約者を誘拐してまで欲しがった「ラビットフット」を強奪する肝心のシーンが省かれてしまったのも減点対象。山場の割り振りを間違えた印象がどうしても付きまとう。「ラビットフット」を手に入れた後の描写をあれほどしつこくやれるなら(パラシュート着地点で敵が待っていてもよかったはずだ)その時間を使ってどうやって奪ったかを描いて欲しかった。
以前はまったく描かれることのなかったIMFという組織の内部も、今回はかなり詳しく描写されている。しかし、こういう組織ならわざわざ自動消滅するガジェットを使ってスパイに指令を伝える必要もないはずだ。自由に組織内に出入りできるのなら、その場で命令を与えればいいのだから。上司が実は、という設定も最初の「
ミッション・インポッシブル」ですでに使っているし、組織のトップまでが怪しい、ということなら「
M:i-2」に登場したスワンベック(アンソニー・ホプキンス)みたいな出し方だってあった。こうして組織そのものを出してしまうと、どうしても「組織対個人」みたいな構図が自動的に出来上がってしまい、今回もイーサンのチームが個人プレー的な作戦を実行する設定が多すぎたように思う。
ところで、脳内に小さな爆弾を仕込む、というアイデアはなかなか面白いが、あんな乱暴な手法で挿入したら、爆発以前にそのときの出血で命はないだろう。最初に設定を読んだときには、もう少しきちんとした施設で脳外科手術を施すのかと思ったのだが^^;・・・
★★★

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