ディックつながりということで、20年近く前録画してそのままになっていた映画をようやく観た^^;
いちおうフィクションではあるようだが、主人公のディック・キンドレッド(トム・ビラード)という名前自体、フィリップ・K(キンドレッド)・ディックほとんどそのままだし、スランプに陥ったSF作家という設定も強くディックを意識させる。監督のゲイリー・ウォルコウは筋金入りのフィルディキアンということで、本編の後に「アルファ系衛星の氏族たち」を映画化する予定だったようだが、結局ポシャッたらしい(ちなみに次の作品は2000年に公開された「バロウズの妻」という、これまたカリスマ的人気を誇る作家ウィリアム・バロウズを扱った作品)
残念ながら物語はディックの作家性に深く切り込むというより、ガールフレンドの勧めでとある家に間借りすることになった売れない作家のその後の顛末、といった趣のセックスコメディに終っていた。本命のガールフレンド、ダイアン(スーザン・デイ=その昔のTVシリーズ「パートリッジ・ファミリー」のローリー役で有名)との仲は一向に進展せず、逆に女家主シーラ(エレーン・ギフトス)とその娘ヘイリー(エリザベス・ゴーシー)はしきりに誘惑してくるし、あいかわらず書いた原稿は出版社に突っ返されてばかりだし、思うように行かないことばかり。コメディとしては全然笑えないし、セックス描写はほとんどないも同じだし、といって実物のディックの伝記というには具体性がなさ過ぎるし(第一、ディックとは切っても切れないドラッグ描写が一切ない)あまり買えるところのない映画というしかない。
ちょっと斬新だったのは、(作中の)ディックの小説世界をそのまま映像化したようなSF的映像がときどき挿入されること。映画の冒頭から始まるので、これはSF映画だったのか、と一瞬迷いそうになる。特に、最初の「2001年宇宙の旅」を思わせる惑星のCG描写には「おっ」と思ったのだが、ここで予算を使い果たしたようで、その後ここまでデラックスなSFXは皆無。あとは、製作年代(すでに「スターウォーズ」から10年近く経っている)を考えるとあまりにお粗末なオプチカル合成が数回出てくるだけ。そのチープさが逆にいくらか(本物の)ディック世界らしい雰囲気をかもし出していた。とはいえ、それが映画本編のつまらなさを帳消しにしてくれるほど魅力的というわけではないが^^;・・・
★★

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