お馴染みのクリフハンガー・アクション大作もいよいよシーズンV,いい加減ネタ切れになりそうなものだが、相変わらずテロリストは暗躍し、全米を未曾有の窮地に追い込むパターンには変わりない。今回、ジャック・バウアー(キーファー・サザーランド)はシーズンIVからの引きで死んだことになっており、石油採掘現場で働く日雇い労働者に身をやつしていたのだが、前大統領パーマーや、CTUのもと同僚たちが次々に暗殺され、いやおうなく事件に巻き込まれていく。
構成のパターンはいつも通り、中盤あたりに大きな山を持ってきて、後半は事件の黒幕を追いつめるという形で引っ張るのだが、今回は敵の設定になかなか凝っていて、比較的見応えのある話になっていた。もっとも、本当に裏で事件の糸を引いていた連中は、最後まで正体を明かさずに終るのだが、このパターンも考えてみればこれまでのシーズン同様である(クルーザーに乗った謎の男とか、結局正体不明で終るキャラがこのシリーズではけっこう多い)
これまた例によって、たった24時間の出来事にしてはあまりに事件が多すぎ、これほど息つく暇もなく次々にことが起こったら、常人では混乱してしまって何が何だか判らなくなりそうだ。もっともこの話では、事件は一話完結で起こることが多く、いくつかの問題が同時進行で起きるような設定にはなっていない。もしそうであったら一人のヒーローが事件を解決するのは不可能になってしまうので、やむなくこんな構成になったのだろう。
ふと思ったのだがこの話、もしスターウォーズなど一連のSF映画が作られていたころに撮られたら、完全に近未来SFの位置づけだったに違いない。なにしろCTU局員のほとんどはコンピューター・オペレーターで占められ、そのなかでは一番のアナログ人間っぽく見えるジャックにしても、ここぞという場面ではなかなかのエキスパートぶりを見せてくれる。かつてと現在とで作劇上一番違う部分は、やはり携帯電話とインターネットの存在だろう。ジャックは作戦の間中ほとんど本部と携帯電話で話しっぱなしだし(他人事ながら、あんなにのべつ話していたらすぐ電池切れになりそうなものである)大量のデータ送信にはネット環境が欠かせない。もちろん無線通信装置はナポレオン・ソロの時代から存在するし(「オープンチャンネルD」のあの万年筆?ね)大仰なテープ式コンピューターも本局の背景には登場するものの、あくまで背景以上のものではなかった。それが現在ではいずれも実用化され、人々はそれを当たり前のように使っている。そう、僕らは今、かつて思い描いた「近未来」のただ中で生きているのだ。
最後にひとつ、ちょっと気に入らなかったことを書く。
何も知らなければ意表を突くラストだったのだろうが、シーズンVIのCMの中でネタばらしされているので、犯人を知ってから読む推理小説みたいなことになってしまった。CMコピーを書く人間は、もう少し見る側の身になって考えて欲しいものである。・・・
★★★★

0