上映時間をほぼ半分に分け、前編を新人探偵小林=591号(成宮寛貴)の目から描き、後編を浮気専門の探偵522号(宮迫博之)の目から描く、という変わった構成の映画。しかし、それが成功していたかどうかはちょっと疑問である。最初から二人のコンビものとして作ったほうが、話に一貫性が出るし、前後編通して観たときの物足りなさも、やや緩和されたかもしれない。もっともあの物足りなさは、作劇テクニック上の本質的欠陥によるものとも思えるので、抜本的に話を作り替えないかぎりどうしようもなかったかもしれないが。
ふつう、探偵ものといえばたいてい主人公は私立探偵であり、一匹狼のヒーローとして描かれることが多いが、本編では、川崎にある「探偵事務所5」という大所帯の探偵事務所に所属する探偵たちの活躍を描くという珍しい設定。探偵たち全員が「5から始まる三桁のコードネームで呼ばれる」ということは、最大100人もの探偵を擁する巨大事務所ということになる。もっとも、事務所の中を行き交う探偵たちや、外で極秘に活動している人数も入れたらとても100人では足りなそうに思えるのだが、ま、そこまでは考えていない設定なのだろう。
お話は、探偵事務所会長500号の孫娘、瞳(貫地谷しほり)の親友が行方不明になり、その調査を依頼された新米探偵591号が、調査の過程で、とある美容整形クリニックを巡る陰謀に巻き込まれる、というものだが、前編でいったん解決したかに見えた物語を後編で522号が引き継ぐ、という形で、構成上の新味は確かにあるものの、相手が美容整形クリニックという、とても「巨悪」というほどのものではなかったため、いくら北の某国のギャングを絡ませても、さほどダイナミックな話にはならなかったのが痛かった。522号の宿敵となる謎の院長、安部にしても、結局のところ単に悪徳病院の院長、というだけの話である。どうにも煮え切らないエンディングといい、せっかくの探偵事務所のウソっぽくもユニークな設定が生かしきれないまま終ってしまった感は免れない。・・・
★★★

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