表題は一般名詞としての「のど自慢」ではなく、はっきり明示はされていないもののNHKのテレビ番組「のど自慢」そのものをネタに作られており(だいたい司会者がもとNHKアナウンサーの金子辰雄だし^^;)テレビ放映を前提とした「のど自慢」をめぐる、歌好きの人たちの人間模様を描いた喜劇である。
僕はNHKで日曜の昼間やってる「のど自慢」にはまったく興味がない。画面にチューブラベルが映し出された瞬間、すぐさまチャンネルを替えてしまうくらいだ。何が面白くて日曜の昼という貴重な時間に、素人の下手糞な歌を聴かされなくてはならないのか、企画意図からしてよくわからない。
というわけで、気になる井筒監督作品でありながら、本編もテレビ放映まで10年近くも待ってしまった。大勢の登場人物たちを、「のど自慢」というひとつの舞台を接点にして描くという手法は、まさに典型的なグランドホテル型式のドラマだが、上映時間の限られている映画というメディアでは、ひとりひとりのキャラクターの掘り下げにどうしても限界があり、下手をすればバランスの狂った作品に、それなりにうまくいっても、三谷幸喜の「
THE有頂天ホテル」のように、妙に小粒にまとまってしまうことが多く、ジャンルとしてはかなり難しいほうではないかと思う。本編もやはりそれぞれのキャラクター描写の甘さは否定できないが、まあ平均点くらいは与えられる水準に達していたと思う。
楽屋オチなのか何のつもりかよく判らないが、かなりいい加減な採点基準が逆に妙にリアルで面白かった。人情ドラマとしては、いちおう主役と思われるドサ回りの演歌歌手、赤城麗子(室井滋)とその父(小林稔侍)の関係とか、家庭環境は絵に描いたように幸せなのに、なぜか事業では失敗続きのパパ(大友康平)のエピソードなど、それなりに面白かったが、「のど自慢」という番組自体、その後につながるもの(ここからプロデビューするとか)ではないために、終ってしまえばそれっきり、というしり切れトンボな印象がつきまとう。まさか続編を作ろうという目論見が、この段階からあったとは思えないが。・・・
★★★

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