先日、惜しまれつつ世を去った植木等氏への追悼番組として放映された、初期の主演映画の一本。植木といえばやっぱり「無責任男」や「ゴマすり男」のイメージが強いが、この「ホラ吹き男」の場合はそれらとは一線を画する、言わば高度成長時代を象徴するようなモーレツサラリーマンの立身出世物語なのである。
三段跳びの選手として東京オリンピックの代表選手だった初等(はじめひとし=植木等)は、怪我のために代表からもれ、郷里に戻って療養生活を送っていたが、ひょんなことからご先祖様、初等之助(植木等二役)の書き残した立身出世一代記を手に入れる。これを読んで触発された等は、自らの人生の目標をオリンピックから社会での立身出世に変更し、難関の一流企業、増益電気への入社をめざす。一度は面接で蹴られたものの、持ち前の知略とガッツで臨時採用ながらも潜り込むことに成功、出世への階段を一気に駆け上がるのであった。
もちろん植木等主演の物語なので、単に努力してみせるだけでは映画として成立しない。出世のために繰り出すあの手この手がいわばキーポイントなのだが、目的のためには手段を選ばない強引さと結果第一主義は、ちょうどこの当時から始まる高度経済成長とも重なって、のちにエコノミック・アニマルと称されるニッポン人のパロディのようでもある。いずれにしろ、評価される当人はいいだろうが振り回される周囲はたまったものではない。
それにしても、臨時雇いから始まった初等の立身出世物語も、結局のところ部長止まりで終わりとは、ちょっとスケールが小さく纏まってしまった感は免れない。むしろ後半に進むにつれてホラのスケールをでかくして、終いには社長の椅子も手にしてしまうようでなければ「日本一」とまでは言えないのではなかろうか。・・・
★★★

0