気づかなかったが、今回が二度目のテレビ放映だったらしい。そのためかどうか、放送時間は90分ちょっとと短めで、劇場版の上映時間より30分ほどもカットされていた。本編を語るときには外せない冒頭の派手なCGもまるまるカットされ、ごくごくフツーのローカルなドラマに再編集されていた。しかし、それで展開が判りにくくなった、ということもなく、むしろ余計な枝葉を切り落としたことで、かえって観やすくなっていたかもしれない。
物語は、ニューヨークでコメディアンとして一旗あげる夢が破れて、故郷の香川に戻ってきた香助(ユースケ・サンタマリア)が、ひょんなことから地元ミニコミ誌のアルバイト編集部員として採用され、たまたま取り上げた地元香川のうどん店めぐりの記事がブームを巻き起こして・・・という一種のサクセス・ストーリィを描く前半と、小さな製麺工場を運営していた父の死によって、香助が麺作りに目覚めていく後半にはっきり分かれていて、二つの物語を無理やり合体させたような不自然さが付きまとった。
この種の庶民的な食べ物を題材にした映画としては、伊丹十三の「
タンポポ」があるが、残念ながら本編は完成度において一歩及ばなかった。監督の本広は、企画段階からあわせると本編を60回もの推敲の後に仕上げた、という話だが、かつて物語を作る側だった立場から言わせてもらえば、あまり手を加えすぎた話は結局のところ失敗に終る公算が大きい。要するに、話をこねくり回しているうちに対象との距離感がおかしくなり、物語に初めて触れる観客の立場を取れなくなってしまう、ということだ。
本編にもそうした「狂い」を感じさせる部分が散見される。たとえば、編集部員の恭子(小西真奈美)の立ち位置など、前半と後半で微妙に違う。ヒロイン風に登場したにもかかわらず、結局いち編集部員としてのポジションを守った前半に比べ、後半では香助の「父の味の再現」にずっと付き合ったりして(いくらミニコミ誌が休刊したとはいえ、クビになったわけでもなかろう)いつのまにカノジョになったのか、と思ったほどだ。香助のコメディアンへの夢と麺作りとの関係にもズレが見られ、結果、話の落としどころに妙なすわりの悪さを感じてしまった。・・・
★★★

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