「雨よりせつなく/当摩寿史;2004年劇場公開作品」
映画
10日ほど前、深夜に放映していたものを、暇つぶし用に録画し今日の午後観た。本来こうした恋愛ものドラマにはまったく興味がなく、なぜ録画するつもりになったのか、当時の気持ちは自分自身判らないが、たまたま番組紹介かなにかで見たワンカットが妙に印象に残り、全編に目を通したくなったのかもしれない。
正直言って、予想通り苦手な恋愛ものではあったが、この種のドラマとしてはおそらく史上もっとも台詞が少ない作品ではなかったろうか。わざとらしい饒舌や、流行の風俗をちりばめるテレビ的演出がそれほど目立たなかった分、多少は物語世界に入り込みやすかった気がする。
主人公綾美(田波涼子)は広告代理店で働くキャリアウーマンで、30歳を目前にして決まった恋人もなく、日々をただなんとなくすごしていた。そんなとき、社内の自販機コーナーで同僚の倉沢(西島秀俊)と出会い、二人は恋に落ちる。その辺のプロセスはなかなか巧みで、割り箸やラジコン飛行機といった小道具の使い方が印象的だった。
なにしろアラサーの二人なので、若者たちの恋愛のように若さに任せて突っ走るわけでもなく、いわば「阿吽の呼吸」で関係を築いていく(スリップ着たままのセックスはないと思うが^^;)少ない台詞の代わりに監督が用いたのが、心象風景の多用である。これには、本業がモデルで演技経験のない田波に難しい「内心の演技」を要求するより、遥かに容易かつ的確に狙った効果を引き出せる、という理由もあったのだろうが、結果として本編を印象に残るカットで埋め尽くすこととなった。何度も使える手法ではないが、本編に関する限り、そこそこ成功していたと思う。
たとえば、綾美と倉沢が勤める広告代理店は、その業種とはアンバランスに思えるほど古臭いビルにあり、その重厚なたたずまいが画面に風格を与えていたし、おそらく意図的なのだろう、綾美がひと気のない釣堀で釣り糸をたれるシーンが三回も出てくる。言うまでもなく、綾美の孤独さを端的に表現していたのだと思う。あそこでもし魚が釣れてしまったら面白かったが、そうしたら場面の意味がまったく変わってしまうので、さすがにそれはなかった^^;
二人の恋の結末についてはネタばれになるので書かないが、まあ、予想したとおりの展開。この種の話としては定番といっていい終わり方だが、さほどマンネリ感がなかったのも前述の心象風景のおかげであろう。
ところで、あのとき海の彼方に飛んでいったラジコン機はその後どうなったのだろう?・・・
★★★

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