「機動戦士ガンダム MSイグルー 1年戦争秘録/今西隆志 2004年作品」
アニメーション
タイトルからも判る通り、この作品はアニメ作品「機動戦士ガンダム」からのスピンアウト作品として作られたものである。これまでもOVAとして「ポケットの中の戦争」「08MS小隊」などさまざまな作品が作られてきたが、それらと決定的に異なるのは、本編はその映像すべてが3DCGにより描かれている、という点である。しかも、ディズニーの一連の作品や「
アップルシード」のようなアニメ寄りの作品ではなく、かつての「
ファイナル・ファンタジー」のように、あくまでも実写作品に迫るものとして作られている。
物語は30分の短編三本(「大蛇はルウムに消えた」「遠吠えは落日に染まった」「軌道上に幻影は疾る」)からなり、それぞれ試験支援艦ヨーツンヘイムに派遣されている第603技術試験隊の技術将校、オリバー・マイ技術中尉の視点から描かれている。第一話はタイトルにもなっているルウム戦役に投入された、幻の試作長距離砲ヨルムンガンドに関する物語、第二話は試作のみに終ったモビルタンク・ヒルドルブが、鹵獲されて今は敵の乗機となっているMS06ザクIIと戦う話、そして第三話はザクとの競争試作に敗れたEMS10ヅダについての物語だが、それぞれ「時局に乗り遅れた兵器と運命を共にする男」という共通したテーマで貫かれている。ただ、30分ものという短さのせいもあるが、そのテーマがちょっと前に出すぎてしまっており、シリーズ全体に同工異曲の繰り返し、という印象が残ってしまった。
売り物の3DCGは、かつてよりかなり雰囲気の出たものにはなっているが(人物の動きなどは「
ロード・オブ・ザ・リング 二つの塔」のゴラム同様に、生身の人間の演技をモーションキャプチャーで取り込んで作っている)たとえば服のしわの感じなど、まだもうひとつリアルでないところが目に付く。下手な俳優を使うよりマシ、ということでオールCGになったのだろうが、シャアのようにイメージの固まったキャラが登場するのならともかく、登場人物全員が初登場なのだから、俳優を使う選択肢もあったのではなかろうか。かつての「Gセイバー」の失敗が、よほど堪えているのかな^^;
メカ表現はさすがにアニメよりリアルな出来になっているが(第二話「遠吠えは落日に染まった」は秀逸)全体に動きが速すぎて不自然なところも目に付いた。特に、ルウム戦役に登場した連邦軍の戦艦など、敏捷すぎてとても戦艦らしく見えなかった。数千人の乗組員が乗った戦艦なのだから、もっと重々しく動かないと巨大感が出ない。また、「軌道上に幻影は疾る」に登場したボールは、姿勢制御に要する時間があまりに短かすぎて、あれではあえてAMBAC技術を開発する必要などないだろうに、と思うくらいだった。・・・
★★★★

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