6,434人もの人々が犠牲となった未曽有の大惨事・阪神淡路大震災から、明日(17日)で丁度12年が経ちます。
震災では交通機関も壊滅的な打撃を受け、大阪・神戸間を結ぶJR・阪急・阪神3社の路線、車両、施設等も甚大な被害を蒙りました。
今日は、震災を振り返って、特に阪急電車の被害状況と復旧状況を、以下に大まかにまとめてみたいと思います。
なお、以下に記載した情報の大半は、札幌市内の図書館から借りてきたDVD『阪神淡路大震災 阪急電車の全記録 ドキュメント1405日』(全90分、98年度作品)に基づいています。
ちなみに、阪急は震災により、土木関係26箇所、高架橋を含む橋梁関係70箇所、停車場関係64駅、軌道関係31箇所、車両92両が被災しました。
1995(平成7)年
【1月17日】
《05:46》 阪神・淡路大震災発生(このとき阪急の営業路線では36列車が運行中もしくは停車中)。
《05:47》 地震2号体制(震度5以上)発令。全列車に緊急停止が指示され、阪急の全線が不通となる。
《05:53》 伊丹線伊丹駅の駅舎と高架橋の崩壊が報告される(阪急の駅の施設では伊丹駅が最大の被害を受けた)。
《05:56》 今津線の宝塚〜宝塚南口にて列車の脱線が報告される。
《06:13》 神戸本線三宮駅東200mの高架橋上で列車の脱線が確認される。
《06:20》 路盤の陥没、ホームの沈下などにより、神戸本線夙川駅での列車走行は不可と報告される。
《06:26》 今津線の西宮北口〜門戸厄神にて、路線の上をオーバークロスしていた国道171号の橋桁が落下していることが確認される。
《06:43》 今津線の門戸厄神〜甲東園間にて、路線の上をオーバークロスしていた山陽新幹線の橋桁が落下していることが確認される。
《06:47》 神戸本線の夙川〜芦屋にて、民家が線路側に傾斜していると報告される。
《07:00》 神戸本線の梅田〜三宮、今津線の西宮北口〜宝塚での徒歩巡回による被害状況が報告される。神戸本線の西宮北口〜夙川では西宮高架橋が倒壊していることが確認される(阪急の施設のなかでは最大の被害)。
《07:30》車両被害の状況が報告される(脱線車両6編成22両、パンタグラフ損傷車両5編成8両、車体損傷車両9編成27両)。
《08:30》 神戸本線王子公園駅のホームが損壊していると報告される。
《09:30》 地震災害対策本部設置。被害状況の把握と同時に復旧計画が立てられる。
《12:00》 神戸本線の住吉川橋梁付近で擁壁が傾斜していると報告される。
《13:00》 今津線の逆瀬川〜小林にてレールが曲折していると報告される。
《19:20》 宝塚線の梅田〜池田で運転再開。
【1月18日】
この日の始発から京都本線では平常ダイヤにて運転を再開。
神戸本線では梅田〜西宮北口で普通列車のみによる運転を再開。
西宮北口より西の神戸本線の被害は甚大で、西宮北口〜三宮はその後、前後が分断された状態で次々と部分開通したものの、各所で寸断された状況は暫く続くこととなる。
伊丹駅の駅舎とともに崩れ落ちた車両が撤去され、阪急全線の復旧工事が本格的に始動。
【1月21日】
伊丹線の塚口〜新伊丹が復旧・運転再開。
【1月23日】
今津線の西宮北口〜門戸厄神、西宮北口〜今津が復旧・運転再開。
神戸本線の梅田〜西宮北口で急行列車が運転再開。
寸断された鉄道の代替として西宮北口〜三宮ではバスが運行され、途絶えていた大阪〜三宮の交通ルートが繋がる。代替バスは大型バスを使い15分間隔でピストン輸送したものの、連日混雑し、長いバス待ちの行列ができた。
【1月28日〜2月2日】
神戸本線の御影〜王子公園の運転再開に向けて、8000系車両8連3本、計24両を車庫から搬送(正雀工場へと回送し、そこからトレーラーで陸路王子公園へと搬送)。
【1月30日】
今津線の宝塚〜仁川が復旧・運転再開。
【2月5日】
今津線の全線が復旧。
【2月9日】
神戸本線の春日野道〜三宮で車両を撤去。
【2月13日】
神戸本線の御影〜王子公園が復旧・運転再開。
同区間は短区間の孤立運転であったが、JRの住吉〜灘間不通の補完の役割を果たし、これによって連絡歩行はあっても大阪から神戸(灘地区)までが鉄道で繋がる。
【2月23日】
全壊した伊丹駅の解体終了。
神戸のランドマークとして長く市民に親しまれてきた
阪急三宮駅も、同月中に全面解体された。
【3月1日】
甲陽線が復旧・運転再開。
【3月13日】
神戸本線の三宮〜王子公園が復旧・運転再開。
大坂と三宮を結ぶルートは3社の鉄道(JR・阪急・阪神)を乗り換えることで前月20日より既に1本に繋がっていたが、同区間の復旧により、乗り換え1回で大坂・三宮の行き来が出来るようになった。
【3月11日】
伊丹駅復旧(倒壊した伊丹駅の手前400mに仮設の駅舎を建設して営業を再開)。
神戸本線の王子公園〜三宮が復旧・運転再開し、震災から55日ぶりに、三宮にJR・阪急・阪神3社の列車が揃う。
【4月7日】
神戸本線の夙川〜岡本が復旧・運転再開(この区間では、同区間に留置されていた2編成のみで運行)。
【6月1日】
神戸本線の岡本〜御影が復旧・運転再開。
三宮〜花隈(
神戸高速鉄道)間の開通に伴い、夙川〜新開地間が結ばれる。
これにより、神戸本線の不通区間は西宮北口〜夙川間2.7qだけとなるものの、この区間は阪急の路線のなかでは最大の被害を蒙り、特に、同区間にある西宮高架橋(1.6q)はロングレール敷設区間であるため、各所でレールが宙吊りとなって枕木の落下やバラスとの流出などの被害が多数発生していた。
このため、阪急では被災箇所だけを復旧するのではなく、安全を考慮して基礎から全てを造り直すこととし、高架橋全体が解体・撤去され連日3500人体制により同月12日の営業開始に向けて不眠不休で高架橋建設工事が行われていた。
同日、阪急の全車両に「6/12全線開通」のヘッドマークが付けられた。
【6月12日】
神戸本線最後の不通区間であった西宮北口〜夙川間2.7qの復旧工事(西宮高架橋建設工事)が完了し、この日から同区間の運転を再開。
これにより、JR神戸線の全通に遅れること2ヶ月余りで、阪急神戸本線の全線が復旧。西宮北口では、神戸行きの始発電車(新開地行き普通)が146日ぶりに神戸に向けて走り出す。
西宮高架橋の建設工事は、通常は2〜3年かかる所を、沿線住民の理解を得て24時間工事を行ったことにより大幅に工期を短縮することに成功し、僅か5ヶ月で終了。
【8月13日】
神戸高速鉄道の新開地〜高速長田の復旧に伴い、阪急電車が山陽電鉄本線の須磨浦公園まで乗り入れ、列車の運行形態が震災前の姿にほぼ戻る(ただし阪急電車の須磨浦公園までの乗り入れは平成10年2月に廃止された)。
1998(平成10)年
【11月20日】
伊丹駅の新駅舎が竣工。この伊丹駅の完成により、震災から1405日目にして阪急は全線が完全復旧。
同日、震災から3年10ヶ月間使われた伊丹駅の仮駅舎での営業が終了。翌日から新駅舎で営業を開始。

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