今から9年前の平成20年に開業した京阪の
中之島線(天満橋〜中之島間、約2.9km)は、
平成18年5月19日の記事の記事でも述べたように(但しその記事は中之島線開業前にアップした記事であるため、記事中では、現在の
中之島駅の事を、当時の仮称であった「玉江橋」と表記しています)、当初から、終点の中之島より路線を延伸する計画がありました。
具体的には、JR大阪環状線・JR桜島線(ゆめ咲線)・
阪神なんば線などの接続駅である西九条駅まで路線を延伸させ、その延伸が成った後は、更に西九条から、人工島の舞洲(まいしま)に新設する新桜島駅(仮称)まで路線を延伸させるという計画でした。
つまり、
鴨東線の出町柳駅から、大阪北港の新桜島駅までが、京阪の線路によって一本に結ばれるという構想でした。
しかし、最近になって、その延伸計画の内容が変更されました。
現在、大阪府や大阪市は、カジノを含む統合型リゾート(IR)を、大阪市此花区にある人工島の夢洲(ゆめしま)に誘致しており(夢洲は、前述の舞洲の対岸に位置する人工島です)、あくまでもその誘致が成功した場合という前提条件が付くのですが、京阪ホールディングス(HD)の加藤好文社長は先月、「夢洲へのIR誘致が決まれば、中之島駅から南西に進んで地下鉄中央線の九条駅に繋げる」との考えを明らかにしました。
つまり、中之島線の現在の終点である中之島駅からの延伸先を、西九条駅から、地下鉄中央線の九条駅に変更するという事です。
京阪にとってはこの新案のほうが、従来の西九条への延伸案に比べて延伸区間が短いため整備費が安くなるというメリットもあります。
九条駅への変更について、京阪HDの加藤社長は「九条駅で中央線と繋げば、京都とIRのある夢洲が結ばれる」と説明しており、夢洲〜祇園四条を1時間強で連絡させて、京阪線(中之島線・京阪本線・鴨東線)を京都観光で訪れるインバウンド(訪日外国人)を夢洲に運ぶ路線にさせたい狙いがあるようです。
IRの夢洲への誘致が決まれば、大阪市も、計画を凍結していた地下鉄中央線のコスモスクエア駅から夢洲までの延伸工事に着手し、平成36年(もっとも、それまでに改元する事が決まっているため、その年が「平成」とはならないのは間違いありませんが)までの運行開始を目指すとしており、それも併せて実現すると、出町柳から地下鉄中央線の夢洲までが鉄路で繋がる事となります。
つまり京阪は、まだ実現していない地下鉄中央線の夢洲までの延伸も見据えた上で(というかそれを強く期待して)、中之島線の延伸予定先を変更したという事です。
ただ、京阪はこの新案で、地下鉄中央線との相互乗り入れを想定しているようですが、京阪本線と地下鉄中央線は、軌間についてはどちらも1,435mmの標準軌なのですが、電化方式について全く異なるため(京阪本線は直流1,500Vの架空電車線方式、地下鉄中央線は直流750Vの第三軌条方式)、その克服は技術的に不可能ではないもののコスト等も考慮すると、実際に京阪本線と地下鉄中央線を直通させる事については課題が多く(更に言うと、両側が高速道路に挟まれている高架駅の九条駅に、どうやって京阪の線路を繋ぐスペースを確保するのかという課題もあります)、今後の検討が必要になります。
ちなみに、IRの誘致成功を見据えて、JR西日本も、桜島駅止まりの桜島線を夢洲まで延ばす事を検討しており、また、近鉄グループHDも、経営している海遊館(世界でも上位五指に入る世界最大級の水族館)を天保山地区から夢洲へ移転する事を検討しており、IRの誘致に成功した場合、夢洲の再開発は一気に進みそうです。
下の写真は、全体的にはまだ広大な空き地が広がっており、埋め立ても途上の、現在の夢洲の全景です。
開業後の中之島線がずっと苦戦を続けているという事は、
平成21年7月7日の記事や
平成23年3月3日の記事などでも詳述しましたが、九条にしろ西九条にしろ、中之島からの延伸が実現した場合は、乗客の少なさから今は「空気を運んでいる」などとも揶揄されている中之島線は、京阪の中核路線、大動脈として、一気に脚光を浴びる事になりそうです。

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