今月の23日から25日にかけて、私は2泊3日の日程で、富山・立山・黒部方面を旅行してきました。
今回の旅行の主な目的は以下の4点です。
@ 霊峰・立山に登りたい!
私は以前からずっと、富士山や白山と共に日本三霊山(三名山)と称される、北アルプス立山連峰の主峰・雄山に登り、標高3,003mの頂上に鎮座する雄山神社峰本社を登拝したいと思っていました。
A 黒部ダムを見てみたい!
大規模な橋・トンネル・塔・ダムなど、超巨大建築物に物凄く“男のロマン”を感じる“中二”的な傾向がある私としては(笑)、日本最大級のダム「黒部ダム」は当然外せません。
黒部ダムの建設については、かつてNHKのドキュメント番組「プロジェクトX 〜挑戦者たち〜」でも紹介され、また、黒部ダムの建設に人生を賭けた男達の熱いドラマを描いた作品としては、石原裕次郎さん主演の映画「黒部の太陽」(昭和43年公開)や、そのリメイクに当たる香取慎吾さん主演のテレビドラマ「
黒部の太陽 」(平成21年放送)なども知られています。
B 立山黒部アルペンルートを体験したい!
富山市内から黒部ダムまでは、富山地方鉄道、立山ケーブルカー、立山高原バス、立山トンネルトロリーバス、立山ロープウェイ、黒部ケーブルカーを次々に乗り継いで行くことになります。
自然保護のため、立山黒部アルペンルートは昭和46年の全線開通以来マイカーの乗り入れが全面的に禁止されており、同ルートを走破するためにはこれらの公共交通機関を利用するしかないのですが、私みたいな乗り物好きなら、こんなに楽しいルートはありません(笑)。
C 富山地鉄のダブルデッカーエキスプレスに乗りたい!
京阪から富山地方鉄道に譲渡された旧3000系特急車の「ダブルデッカーエキスプレス」に乗ってみたいです。この列車については、
先月25日 の記事で詳しく紹介させていただきました。
23日の夜に札幌を出発し、翌24日の早朝から現地で行動を開始し、そして最終日の25日は昼過ぎには札幌への帰途に就くため、24日と、25日午前中の計1日半が、今回の旅行における私にとっての事実上の行動時間であり、この1日半を精一杯(ギリギリ限界まで)使って、上記4点の目的を全て達成すべく富山・立山・黒部方面を周ってきました。
前記目的のうち
@ ・
A ・
B は、いずれも24日に達成しましたが、折り返し地点となる黒部ダム(黒部湖駅)から発つケーブルカーは、16時丁度に発つ便が立山・富山方面に接続する最終便(つまりこの便を逃すと同日中に富山市内に戻れなくなる)であることから、この便には絶対に乗り遅れるわけにはいかず、そのため24日は、黒部湖駅から発つ16時発の便に必ず乗れるようにという大前提で予定を組み、それに基づいて行動しました。
ちなみに、前記目的の
C については、翌25日に達成しました(この件については後日、別の記事で改めて詳述します)。
以下が、24日に私が乗車した各列車等のダイヤです。限られた時間をフルに活用するため、早朝から行動開始しました。
電鉄富山駅 … 05:39発(富山地鉄・急行)
立山駅 ……… 06:28着
立山駅 ……… 07:00発(立山ケーブルカー)
美女平駅 …… 07:07着
美女平駅 …… 07:25発(立山高原バス)
室堂駅 ……… 08:15着(室堂に着いてから暫く周辺散策)
立山室堂前 … 09:15発(徒歩、登山開始)
雄山山頂 …… 11:15着
雄山山頂 …… 11:55発(徒歩、下山開始)
室堂駅 ……… 13:25着
室堂駅 ……… 13:45発(立山トンネルトロリーバス)
大観峰駅 …… 13:55着
大観峰駅 …… 14:00発(立山ロープウェイ)
黒部平駅 …… 14:07着
黒部平駅 …… 14:20発(黒部ケーブルカー)
黒部湖駅 …… 14:25着(黒部湖・黒部ダム見学)
黒部湖駅 …… 16:00発(黒部ケーブルカー、これが立山に接続する最終便)
黒部平駅 …… 16:05着
黒部平駅 …… 16:15発(立山ロープウェイ)
大観峰駅 …… 16:22発
大観峰駅 …… 16:30発(立山トンネルトロリーバス)
室堂駅 ……… 16:40着
室堂駅 ……… 17:00発(立山高原バス)
美女平駅 …… 17:50着
美女平駅 …… 18:00発(立山ケーブルカー)
立山駅 ……… 18:07着
立山駅 ……… 18:12発(富山地鉄・普通)
電鉄富山駅 … 19:12着
前置きが随分と長くなってしまいましたが、以下に、私が立山黒部アルペンルートで乗り継いできた各種交通機関やその駅と、同ルートでの最終目的地(折り返し地点)となった黒部ダムについて、写真と共に紹介させていただきます。
◆ 電鉄富山駅
富山市内中心部から立山・黒部方面へ向かう場合、まずはここから立山に向かって出発することになります。
改札口の上には「RAILWAYS」と大きく書かれた横断幕が掲げられていますが、これは同駅が、三浦友和さん演じる富山地方鉄道運転士・滝島徹を主人公にした映画「RAILWAYS 愛を伝えられない大人たちへ」(平成23年公開)の主要な舞台のひとつになったためです。
この駅は、頭端式ホーム3面4線を有する、富山地方鉄道では最大のターミナル駅で、駅の真上には富山地鉄ホテルが、駅の地下にはスーパーマーケットがそれぞれ開設されています。
◆ 立山駅
立山黒部アルペンルートの富山県側からの起点(長野県側から来た場合は逆に終着点)となる駅で、黒部方面へ向かう場合はこの駅から本格的に立山の山中へと入って行くことになります。
駅舎はロッジ風で、1階に富山地鉄のホームが、2階に立山ケーブルカーのホームがあります。
◆ 立山ケーブルカー
立山・美女平の両駅間1.3km(標高差約500m)を約7分で結ぶケーブルカーです。
標高475mの立山駅から、標高977mの美女平駅までは、平均勾配24度の急斜面を走るこの立山ケーブルカーに乗って上ります。
この路線のケーブルカーは原則として客車と貨車の2両編成で、編成の立山駅側に、ケーブルカーの貨車としては日本最大規模の大型貨車が連結されています。
◆ 立山高原バス
美女平・室堂の両駅間23km(標高差約1,500m)を約40分で結ぶバスです。
標高977mの美女平駅から、鉄道の駅としては日本最高所となる標高2,450mの室堂駅までは、この立山高原バスに乗って上ります。
立山特有の急勾配や気象条件に対応できるように開発された専用の高出力型ハイブリッドバスで、ディーゼルエンジンと電気モーターを併用し、燃費を抑え黒煙などの排出ガスを抑制しています。
◆ 室堂ターミナル
アルペンルートでは黒部ダムと共に一大拠点となっているターミナルで、立山高原バスと立山トンネルトロリーバスの乗り換え駅(室堂駅)であると同時に、ホテル、レストランや、コーヒーショップ、売店、展望テラスなどの施設も併設されています。
立山連峰の雄山に登頂する際は、大抵の場合、出発点となる地点でもあり、私もここ(室堂平)から延びる登山道を歩いて、雄山に登ってきました。
◆ 立山トンネルトロリーバス
室堂・大観峰の両駅間3.7km(標高差約130m)を約10分で結ぶトロリーバスです。
トロリーバスは、架線からの集電装置(トロリー)が屋根上に設置されていることや、車体の前後にナンバープレートが付けられていないことなどを除けば、外観はほとんど一般のバスと変わりませんが、正式には「無軌条電車」といって、あくまでも鉄道に分類される乗り物で、法的な扱いとしてはバス(自動車)ではありません。
トロリーバスは、電車と同じように架線から給電される電気によってモーターで動くため、トンネル内では一切排気ガスを排出せず環境保全に大きく役立っており、国内ではアルペンルートの2路線(立山トンネルと関電トンネル)でのみ運行されています。
下の写真2枚はトロリーバスの車内の様子です。
客席は普通のバスと変わりませんが、運転席に配置されている各種装置や計器等は、一般のバスとはちょっと雰囲気が違います。
室堂駅から標高2,316mの大観峰駅までは、この立山トンネルトロリーバス(8000形車両)に乗って下ります。
立山トンネル(関電トンネルのほうも同様ですが)は一車線分の幅しかないため、中間に交換地点が設けられていて、車両はそこで行き違いをするのですが、こういった交換の仕方も、単線を走る上り・下り双方の鉄道車両が駅もしくは信号場で行き違いをするのと全く同じ仕組みです。
下の動画は、黒部ダムで折り返してからの帰途(大観峰発→室堂行)の車内から撮影した、室堂駅に着く直前の前面展望動画です。
VIDEO
◆ 立山ロープウェイ
大観峰・黒部平の両駅間1.7km(標高差約500m)を約7分で結ぶロープウェイです。
断崖絶壁にせり出すようにして建つ標高2,316mの大観峰駅から、標高1,828mの黒部平駅までは、この立山ロープウェイに乗って下ります。
立山ロープウェイは、駅間に支柱が一本も無いワンスパン方式のロープウェイとしては、日本最長距離を誇ります。
昨年、24年ぶりにリニューアルされたこの客車(ゴンドラ)は3台目とのことです。
ロープウェイのゴンドラは、360度のパノラマが楽しめる“動く展望台”でもあり、いろいろな交通機関で形成されている立山黒部アルペンルートの中では、最もダイナミックな気分を味わえます。
昇降にしたがって変化する、エメラルドグリーンの黒部湖や、黒部湖の対岸に聳え立つ後立山連峰の壮大な景観を、じっくり楽しむことができます(但し車内が混雑している場合は視界が著しく遮られるのでその限りではありませんが)。
◆ 黒部ケーブルカー
黒部平・黒部湖の両駅間0.8km(標高差約400m)を約5分で結ぶケーブルカーで、自然保護と雪害防止のため、全線がトンネルになっています。
標高1,828mの黒部平駅から、標高1,455mの黒部湖駅までは、平均勾配31度の急斜面を走るこの黒部ケーブルカーに乗ってトンネルを下ります。
私が3年前、
青函トンネル内 (体験坑道駅)と地上(青函トンネル記念館駅)の間で乗車してきたケーブルカー(
青函トンネル竜飛斜坑線 )も全線がトンネルでしたが、このように路線の全区間がトンネルの旅客ケーブルカーというのは、国内では恐らく、黒部ケーブルカーと青函トンネル竜飛斜坑線の2路線だけです。
VIDEO
下の写真はトンネル内にある黒部湖駅で、立山黒部アルペンルート中最大の観光地である黒部ダムや黒部湖は、この駅から地上に出るとすぐ目の前にあり、私にとってはこの駅が、この日の折り返し駅(ここからまた富山方面へと戻る)となります。
ちなみに、立山黒部アルペンルートで運行されている各種交通機関のうち、同ルートの大部分に当たる立山駅〜黒部湖駅間の交通機関は全て、富山県・立山開発鉄道・北陸電力・関西電力等の出資により昭和39年に設立された立山黒部貫光株式会社(本社・富山市)が運行しています。
同の社名「貫光」の2文字には、富山地方鉄道や立山黒部貫光の創業者である佐伯宗義氏による、「何としても立山連峰を貫いてアルペンルートを完成させる」という強い願いと信念が込められているそうです。
◆ 黒部ダム
関西電力の水力発電所「黒部川第四発電所」が地下に建設されていることから「黒四ダム」の通称でも広く知られているこのダムは、高さは186m、長さは492m、総貯水量は約2億トンで、ダムとしては日本最大級、世界でも屈指の大きさを誇ります。
戦後の急速な経済復興により特に関西圏で深刻化しつつあった電力不足を解消するため、関西電力は、豊富な水量と大きな落差から水力発電の適地とされながらも厳しい自然条件からダム建設を阻まれてきた黒部川上流に、国内最大規模のダムを建設することを決定し、昭和31年に建設を開始しました。
ダム建設地への資材運搬のため最も完成が急がれた大町トンネル(現・関電トンネル)の建設工事では、入口から2,600mの地点で80mにも及ぶ大破砕帯に遭遇し、毎秒660リットルもの地下水と大量の土砂が吹き出るなどして工事が中断され、一時は開通が絶望視されましたが、7ヶ月の期間を要しながらも苦闘の末についに破砕帯を突破し、昭和33年に大町トンネルが開通しました。その苦難の工事の模様は、小説や、前出の「黒部の太陽」などにも描かれ、現在に伝えられています。
昭和34年にはダムと発電所を結ぶ黒部トンネルも開通し、同年、ダム本体のコンクリー打設も開始され、そして昭和38年、ついに黒部ダムが完成したのでした。
VIDEO
のべ1千万人以上の作業員と総工費513億円(現在の価値でいうと1兆円をはるかに超えるそうです)を投じ、黒部の厳しい自然に挑んだその難工事は、青函トンネルの建設などと共に国内では戦後最大規模の工事でした。
黒部ダムレストハウスにある「くろよん記念室」では、世紀の大事業と云われ今も語り継がれているその黒部ダムの建設を、模型、断面立体図、三面マルチ映像などで分かりやすく解説しています。
下の写真は、実物大人形で再現されている掘削工事の様子です。
ダムの東側には、黒部ダム建設の難工事で殉職した171人の名を刻んだプレートと、彫刻家の松田尚之さんにより彫像された殉職者慰霊碑「六体の人物像」があります。
「大きく厳しい大自然に敢然と挑んだ人々のロマンの足跡」と称えられることもある黒部ダムですが、その建設の過程では、トンネル内の断層から噴き出す大量の水・土砂や、転落事故などで、これ程多くの尊い犠牲があったということを、私達は決して忘れてはいけません。
◆ 国土交通省立山砂防工事専用軌道
黒部ダムの見学を終えた私は、この日の宿泊先である富山市内のホテルへ向かうため、また各種の交通機関を乗り継いで富山へと引き返しました。
下の写真は、立山駅に着く直前に立山ケーブルカーの車内から一瞬だけ見えた、立山砂防軌道の通称で知られる「国土交通省立山砂防工事専用軌道」の線路です。
この路線は、国の直轄事業である常願寺川流域の砂防施設建設に伴う資材・人員の輸送を目的とする専用鉄道(旅客営業はしていないので一般の人は利用できません)で、全長約18km(標高差640m、所要時間1時間45分)の路線には、平成25年現在、38段ものスイッチバックがあります(これでも、路線の改良工事等により以前よりはスイッチバックの数が減っています)。
こうして、16時丁度に折り返し地点の黒部湖駅を経った私は、3時間強かけて、19時12分に電鉄富山駅に到着し、この日の日程を全て終えました。
立山黒部アルペンルートは、とにかく乗り継ぐ交通機関の数が驚く程多いので、ただでさえ疲れている状況だと、乗り換えるだけでも更に疲れが増しますが、でも今回はユニークな乗り物が多かったので(トロリーバスなんて生まれて初めて乗りました)、乗り物好きの私としてはかなり楽しめました(笑)。
ちなみに、以下のURLの記事2本は、私が今回の旅行から帰ってきてからネット上にアップされた記事なのですが、これらの記事によると、「行ってよかった日本の無料観光スポット」の第1位は黒部ダムとのことです!
http://japan.internet.com/wmnews/20130927/2.html
http://rocketnews24.com/2013/09/30/372916/
0