昨日(10月25日)の北海道新聞に、『リニア、南アルプス貫通も』というタイトルでリニア中央新幹線関連の記事が載っていました。
現在試験運転が行われている山梨リニア実験線が本線の一部に組み込まれる事になっている「リニア中央新幹線」は、輸送量が限界に近づきつつある東海道新幹線のバイパス路線として、中央本線と関西本線にほぼ沿う形(甲府市付近、名古屋市付近、奈良市付近を経るルート)で東京〜大阪に建設される予定の路線で、同線が完成すると東京〜大阪間は約1時間で結ばれる事になります。
上の図の黄色い帯で示されたルートが、現在発表されているリニア中央新幹線の建設予定ルートなのですが、この図を見ればお分かりのように、山梨県から長野県にかけてのルートは北方向に大きく湾曲しています。
これは、リニアは長野県の中央部にも立ち寄るべきである、という需要予測や政治的な動向からこのように設定された訳ではなく、急峻な南アルプスを避けるという地理的な事情からこのルートに設定されたのですが、しかし、南アルプスを迂回して北上するこのルートはカーブが大きく、所要時間のロスは避けられません。
そのため、南アルプスを迂回するのではなく、南アルプスをトンネルで貫く事はできないのか、それを調べるため「JR東海では南アルプスの地形・地質を調査する方針を明らかにしました」というのが前述の記事の趣旨でした。
トンネルの建設が可能と判断されれば、リニアのルートはほぼ直線となり、更なるスピードアップに繋がります。
とはいえ、リニアの実用化はまだまだ先の話です。
リニアモーターカーの走行試験が山梨リニア実験線で始まったのは平成9年なので、実験開始から今年で10年経ったことになりますが(宮崎実験線での走行試験開始は昭和52年なので、宮崎での試験も含めるとリニアの走行試験は今年で開始から約30年も経ちます)、かなり長いこと試験を行っている割には実用化の具体的な目処については一向に発表がなく、私としても正直不安に思っていたのですが、今年の4月になってようやく、山梨リニア実験線を運用しているJR東海では「平成37年(2025年)に首都圏〜中京圏でリニアモーターカーを使った中央新幹線の営業運転開始を目指す」と発表をし、初めてリニアの営業開始時期を明示しました。
しかしこの発表によると、まずは東京〜名古屋の間で先行して営業運転を開始する、そしてその時期は平成37年とする、という事です…。
具体的な営業開始時期が示されたことについては、「やっと先が見えてきたよ!」と正直ホッとしましたが、しかし「平成37年って、…18年後ですか、結構未来の話じゃん!しかもそれはあくまでも東京〜名古屋間の話だから、名古屋から大阪に延びるのは、…早くても二十数年後ってことですかい!」とも思い、まぁ何といいますか、あまり素直には喜べませんでした。
営業開始時期が示されたということは、リニアの計画が着実に前進していることを示すものなので、もっと喜ぶべきなのかもしれませんが(笑)。
ちなみに、国土交通省鉄道局長の私的諮問機関である「中央リニア新幹線基本スキーム検討会議」の試算によると、リニア中央新幹線(東京〜大阪間)の事業費は約8.3兆円〜約9.9兆円(建設費が約7.7兆円〜9.2兆円、車両費が約0.6兆〜約0.7兆円)と試算されています。
JR東日本やJR西日本もリニア中央新幹線の経営に参画する意向を示していますが、営業収入の9割を東海道新幹線に依存しているJR東海にとっては、ドル箱である東海道新幹線のバイパス・中央新幹線がどこに帰属するかは会社にとっての死活問題となるため、JR東海では自らのイニシアティブのもとにリニア中央新幹線を推進・実現するとしています(JR東海では自力での建設は可能と判断しています)。
ところで、私が暮らす北海道にも、かつてはリニアモーターカーの構想がありました。私が小学生だった頃の話ですが。
札幌の都心部と千歳空港(当時は新千歳空港はまだありませんでした)の間を十何分かで結ぶという構想で、都市間の長距離輸送を目指している中央新幹線とは方向性が違いましたが。
ちなみに、現在は、その区間(札幌駅〜新千歳空港駅間)は快速電車により約30分で結ばれています。
上の写真は、7年前に、山梨リニア実験線の走行試験を見学した時に撮影した写真です。
時速500km以上の速度で疾走するリニアを間近で見た時は、月並みな感想で申し訳ありませんが、やはり「おおっ、マジスゲー早い!」と思い、結構感動しました(笑)。
そして、明治初期、所謂“お雇い”の英国人達から馬鹿にされながらもそれに耐えて必死に運転技術を習得していった当時の日本人機関士達が、もしタイムマシンに乗って現代にやって来て、鉄道技術の最先端を突っ走るこの現場(リニアの疾走)を見たら、きっとその場で泣き崩れて喜ぶのではなかろうか、とも思いました(笑)。
実用化はまだ先でも、やはりリニアは日本の誇りですね!

1