前々回の記事に続き、今回も叡山電鉄に関する記事です。今日取り上げるのは、平成10年に「第38回ローレル賞」を授章した叡電の傑作車両「デオ900型」です。
このデオ900型は、私の特に好きな鉄道車両のうちの一つです。その洗練された洒落たデザインの外観と、輸送力をほとんど無視して観光客にターゲットを絞ったその特化性が、特に好きです(笑)。
上の写真は、今から4年程前に鞍馬駅で撮影したデオ900型です。
鞍馬線は、紅葉シーズンや「鞍馬の火祭」の日は観光客で混雑する路線ですが、私が同線を利用したこの時期は観光オフシーズンだったため車内は閑散としており、出町柳駅〜鞍馬駅間の約30分間の短い旅をのんびりと満喫してきました。
下の写真は、宝ヶ池駅構内で叡山本線から鞍馬線に入線するデオ900型です。デオ900型は、原則として出町柳駅〜鞍馬駅間でのみ運用されており、宝ヶ池駅〜八瀬比叡山口駅間を走ることはほとんどありません。
叡電は、昭和54年にデオ600型を登場させて以降、車両の新造は行っておりませんでしたが、叡電の悲願であった
京阪鴨東線の開業が間近に迫ると積極策に転じ、昭和62年、叡電は開業後の鴨東線を見据えてデオ710型、デオ720型、デオ730型といったワンマン運転対応の新型車を登場させ、そして狙い通り鴨東線開業により乗客が大幅に増えると、今度は輸送力強化のため、叡電初の2両固定編成であるデオ800型、デオ810型を登場させました。
しかし、その後京都市営地下鉄烏丸線が国際会館駅まで延伸されると再び乗客が漸減傾向となり、鴨東線効果が次第に薄れて乗客が烏丸線に流れ出すようになりました。
これに危機感を抱いた叡電は、鞍馬・貴船方面への観光客輸送のテコ入れを図るため、平成9年に2両固定編成の新造車両を投入しました。
この新造車両が、「きらら」の愛称を持つ、このデオ900型です。
デオ900型はこういった経緯により誕生したため、大きなガラス窓を採用したパノラミックな観光電車として製作され、座席の配置は、1列+2列の固定クロスシートが基本となっていますが、各車両とも4席8人分は、天井まで拡大した特大の窓越しに景色を楽しんで貰えるよう窓に向けて配置されています。
また、視界を遮らないようにとの配慮から、カーテンや日よけの類は一切なく(但しガラスは日差しを遮る熱線吸収タイプです)、デオ900型は、事実上、沿線の紅葉を鑑賞するために特化した車両として設計・製作されているのです。
以下の写真が、そのデオ900型の車内を写したものです。
各車両とも連結側の出入台付近は立席の談話スペースになっており、そこには小型テーブルも設けられています(この部分は「チャット・コーナー」というそうです)。
デオ900型は、現在2編成が在籍し、車体上半分のカラーでこの2編成が色分けされています(それぞれ赤とオレンジ)。
ちなみに、「デオ○型」の「デオ」とは、京福電鉄(叡電は京福電鉄から分社化した会社です)の独特の呼称で、デは電動車、オは大形、ナは中形を表しています。

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