昨日の記事でも記しましたが、阪神は現在、西大阪線(尼崎〜西九条間の6.3kmを結ぶ支線)の終端駅・西九条駅から、近鉄の難波駅に至る新線・難波延長線(3.4km)を建設中です。
正確には、この新線を建設しているのは阪神ではなく、阪神や大阪府などの出資によって設立された第三セクター「西大阪高速鉄道」ですが。
実は、この新線は40年以上も前から計画されており、実際、西九条駅はその先から路線が延伸されることを前提に、高架駅としてはかなり不自然に途切れた形で造られているのですが、昭和30年代末頃に新線の建設が決まったとき、「街が分断される」として地元商店街の強い反対に遭い、結局昭和42年に、難波への新線の建設は中止に追い込まれてしまったのです。
新線の建設計画そのものはまだ生きていたものの、その後は具体的な動きは全くないままに時間だけが過ぎ、そのためほとんどの人が、もうこのまま新線が着工されることはないのでは、と思いつつあったのですが、平成13年になってやっと、新線の建設が始まったのです。
西九条〜近鉄難波間の開業予定は平成21年春です。
新線の途中駅は、西九条駅方面から順番に、九条、岩崎橋、汐見橋の3駅(いずれも仮称)で、難波では、近鉄の難波駅に阪神が乗り入れる形で接続されます(ですから難波駅の名称は今後も「近鉄難波」のままです)。
なお、新設される3つの中間駅は全て他路線の駅と乗り換えが可能で、九条駅では地下鉄中央線の九条駅と、岩崎橋駅では地下鉄長堀鶴見緑地線の大阪ドーム前千代崎駅と、汐見橋駅では南海高野線の汐見橋駅と、それぞれ接続されます。
南海の汐見橋駅は、今は高野線の盲腸線のような支線の寂れた終端駅ですが、なにわ筋線(JRと南海が第二種鉄道事業者として乗り入れる予定の第三セクター)開業時には地下駅化され、この駅でなにわ筋線が高野線と直通し、梅田方面と関空を結ぶ空港アクセス列車が走ることになるので、この駅と阪神の新線が接続されることは、阪神沿線からも関空へのアクセスが良くなることを意味します。
新線の開業後は、阪神の西大阪線と近鉄の奈良線が相互直通し、阪神三宮〜近鉄奈良間に快速急行が運行されます。
新線の開業により、山陽電鉄〜神戸高速鉄道〜阪神〜近鉄間の線路が一本に繋がることになるので、定期運転されることはないでしょうが、臨時便として、山陽姫路〜近鉄名古屋間の私鉄最長距離を走る列車が運行されることもあるかもしれません。
なお、新線の開業に合わせて、阪神本線と西大阪線の分岐駅である尼崎駅も、現行の島式ホーム3面5線から、島式ホーム4面6線の駅に改良されます。
また、同駅の西大阪線に使われるホームも、難波から直通してくる10両編成の近鉄電車が停まれるよう、215mの長さに延伸されます。
新線の今後の課題としては、列車の待避をどうさせるか、という問題があります。
新線の開業により神戸と大阪ミナミ間が直結されるため、この区間の輸送は新線がほぼ独占することになりますが(ただしJRの大阪外環状線が開業すれば、JRも同区間の直通新快速を走らせることになります)、しかし現在の西大阪線には列車交換可能な駅がないため、阪神三宮〜近鉄奈良間に運行される予定の快速急行は最短でも20分間隔でしか運転できず、新たに待避線を設置するなどの措置が必要になってきます。
上の写真の車両は、阪神の所有する車両のなかでは現時点では最新型の9300系で、これは甲子園駅のホームから撮影しました。
新線開業時には、この9300系の後継型として、近鉄線への乗り入れを前提とした新型車両(10000系?)が新造・運用されることになるでしょうが、コスト的な問題から、当面は、阪神・近鉄両社とも、現行の車両に相手方の会社の保安機器を装備させて直通させるようです。
しかし、阪神と近鉄の車両は長さが異なり、そのため当然扉の位置も異なり、また阪神の車両は、全国でも阪神一社でしか使っていない特殊な形の連結器を使用しているなど、相互直通に関しては問題も少なくなく、そのため、車両の長さは今さらどうにもならないかもしれませんが、連結器に関しては今後阪神が近鉄の形に統一することになるかもしれません。

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