神戸市中央区にある阪神本線の「春日野道駅」という地下駅は、少し前まで「日本一危険な駅」といわれていました。
何が危険なのかというと、一昨年に新しいホームが完成するまで、この駅のホームは上下線で同じ1本のホームを使う島式のホームだったのですが、そのホームの幅が、僅か2.6mしかなかったのです。
春日野道駅は元々は地上にあった駅だったのですが、昭和初期に三宮駅・岩屋駅間が地下線化されることになったとき、新線の開業に合わせて廃止されることになりました。
しかし、同駅は川崎製鉄関係者の利用者が多かったことから、川崎製鉄からの強い要請で新線の開業寸前に存続することが決まり、しかしそのとき地下線はほぼ出来上がった状態であったため、新たにホームを建設するスペースなどはなく、そのため、やむをえず複線の間隔分2.6mに無理矢理島式ホームを建設したのです。
そのため、春日野道駅のホームは、極端に狭い危険なホームとなったのです。
特急電車が通過するとき、列車の接近を知らせる警報音がホームに鳴り、その後ホームの左右を鉄の塊がゴーっと音を立てて走り抜け、トンネルの中に激しい突風が吹き荒れ、利用者たちはホームの真ん中に立てられた柵にしがみ付いて列車の通過を待つのです。
春日野道駅を通過する特急は、近年は駅の手前で45kmまで減速して通過していましたが、恐ろしいことに地下線の開業当初は、特急は減速せずにそのままの速度(およそ70km)で通過していたそうです。しかもその当時は、ホーム中央部にはまだ柵も設置されておらず、警報音も鳴らなかったそうで、それに加え地下駅という閉鎖された空間であるため、当時の利用者たちは本当に怖い思いをしていたはずです。
しかし、「日本一危険な駅」と言われ続けながらも、幸いにして同駅では今まで一度も事故は起きていなかったのですが、かといって、このままの状態ではやはり危険すぎるため、平成16年9月、同駅では幅4.7mの相対式ホームを2つ新設し、ついに「日本一危険な駅」という汚名を返上しました。
ただし、島式ホームが運用されていた当時は6両編成の電車の停車が可能でしたが、現在は4両の電車しか停車できず、6両編成の電車が停車するときは先頭車と最後部の車両は扉を閉め切りにします。このため新設の相対式ホームは、今後6両に対応させるため延伸される予定です。
現在でも、複線の間に設置された旧ホームは取り壊されることなくそのままの状態で置かれていますが、新しいホームの完成後は、ホームとしての運用は廃止され使用されておりません。
今回の写真は、新ホームに切り替わる前年の平成15年に、実際に春日野道駅で降りて、問題の島式ホームを撮影したものです。確かに狭かったです。
なお、国土交通省から駅改良工事費用の補助を受けられるようにする意図から、阪神では、駅改良工事に伴い同駅を前回の記事で詳しく述べました神戸高速鉄道に譲り渡しており、現在同駅は、神戸高速鉄道が第三種鉄道事業者として所有し、阪神は、同駅を神戸高速鉄道から借り受けて使用する形になっています。
ちなみに、春日野道駅が「日本一危険な駅」の汚名を返上したことで、現在「日本一危険な駅」といわれているのは、阪急宝塚線の中津駅のホームです(神戸線のホームよりも宝塚線のホームの方が更に狭いそうです)。
私は中津駅で降りたことはまだないのですが、宝塚線の中津駅のホーム(ここも複線に挟まれた島式ホームです)は、宝塚方面に延伸されたため、端に行けば行くほど狭くなっているそうです。

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