阪神本線にある武庫川駅は、兵庫県尼崎市と西宮市の境界上にある駅なのですが、それ以上に変わっているのは、この駅のホームは駅名の通り、武庫川という川の上にあるのです。
とはいっても、川に架かる橋の上にホームが設置されていること自体は別段珍しいわけではなく、例えば、同じ阪神本線にある芦屋駅や、阪急神戸本線の芦屋川駅なども川の上にホームがあります。
私の家の最寄駅である札幌市営地下鉄南北線の自衛隊前駅(地下鉄の駅ですが地下駅ではなく高架駅です)も、ホームの一部は川にかかっています。
しかし阪神芦屋駅・阪急芦屋川駅・自衛隊前駅などは、いずれもホームの一部が川にかかっているだけで、川幅も狭いのですが、阪神の武庫川駅は、川幅が200mもある大きな川の真上に阪神本線のホーム全体が設置されており、そのため同駅を遠くから望むと橋梁全体が駅になっているのです。こういった構造の駅はかなり珍しいといえます。
また、ホームが川の真上にあるため、同駅のホームから線路を覗くと、枕木と枕木との間から下を流れる川の水を間近に見ることもできます。
下の写真2枚は、いずれも私が同駅を利用した際に、1番線(梅田方面)ホームから撮影したものです。
ちなみに2枚目の写真に写っている赤帯の電車は、阪神本線に乗り入れている山陽電鉄の5000系電車(阪神難波と
山陽姫路を結ぶ直通特急)です。
なお、ホームは1番・2番共に阪神車両6両編成分の長さでしたが、
阪神なんば線の開業に合わせて今月20日から同駅に乗り入れる近鉄の車両に対応するため、昨年ホームが延長され、現在は近鉄車両6両編成分の長さが確保さています。
上の写真を見れば分かるように、阪神本線における武庫川駅のホームは相対式の2面2線なのですが、実は同駅にはその2面2線以外にも、まだホームと線路があります。
同駅は阪神本線だけの駅ではなく、
阪神武庫川線の起点駅でもあり、武庫川線のホームと線路は、阪神本線とそのホーム(川を遮る向き)とは垂直の配置(川の流れに沿う向き)で、武庫川西岸の築堤下に島式1面2線が設けられているのです。具体的な配置は下図を御参照下さい。
もっとも、その島式1面2線のうち、実際に旅客列車が使用している線路は、阪神本線への連絡線に繋がっている東側の線路のみで、行き止まりとなっている西側の線路は使用されておらず、西側の線路には出発信号機も設置されていないため、実質的には1面1線の構造といえます。
武庫川線内には車庫がないため、武庫川駅構内には、武庫川線と阪神本線とを接続する連絡線もあるのですが、上の図では、「森文化」と「インテリア大樹」のある区画の南側に沿っている曲線が、その連絡線です。
そして、「小松龍王大神」の「王」の字辺りで線路は行き止まりになっており、そこから先・北方向へは線路は延びていません(昔はその先にも線路が延びており駅もあったのですが、今は廃線になっています)。
そのため、阪神本線から武庫川線に入線する場合は、まず本線から連絡線(前述の曲線)に入り、「小松龍王大神」の「王」の字辺りまで進んだ後、そこでスイッチバック運転をして直線に下がって、阪神本線の下を立体交差して武庫川線の東側ホームへと入るのです。
上の写真は
一昨年5月16日の記事からの再録なのですが、この写真の左側にある踏切が、先に示した図の「インテリア大樹」の「ン」の字の辺りです。踏切上の通路と線路との間に扉が設置されているのは、列車が走る頻度の低さを物語っています。
阪神本線と武庫川線の直通列車は運転されていないため、この連絡線を走るのは基本的に、回送列車や、線路保守のための整備車両だけなのです。
なお、武庫川駅の改札口は橋(つまり阪神本線の相対式ホーム)の両側(西宮市側、尼崎市側)にそれぞれ設置されている他、武庫川線内の各駅が無人駅のため本線ホームと武庫川線ホームとの間にも中間改札口が設けられています。

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