8月8日はしま太郎の誕生日だった。
夏休み中の誕生日は誰にも祝ってもらえない。
おかんが好きな食べ物を用意してくれて、ケーキを食べるくらいだ。
今年も「何食べたい?」と訊かれたけども、
「別に何でも。」と答えてフラリと外へ出た。
まだまだ明るい夕方。
近所の商店街はなんとなく盛り上がっている。
サンダルでパタパタ歩いていると、どこへでも行ける気がした。
しばらく来たところでコンビニに寄ってレモンティーを買った。
レジでお金を払う時、
「あと、マイルドセブンも...。」
と、不意に言った。
「普通のでよろしいですか?」
と店員にきかれ、あわてて、
「あ...、はい...。」
と答えた。
しま太郎は初めてタバコを買った。
クラスの男子の多くはタバコを吸っている。
女子でもいるくらいだ。
今まで吸ったこともなく、興味もなかった。
むしろ、吸う人が嫌いであった。
でも、なぜか、このタイミングで、ふと、買ってしまった。
多少おどおどしていたかも知れないが、
店員は気にもせず売ってくれた。
家にもどり、おとんのライターをパクり、
トイレでこそっと吸ってみた。
ひとくち吸った時点でゴホゴホとなり、半分も吸わないままトイレに捨て、残りのタバコをポケットに押し込んだ。
晩ゴハンは家族と目玉焼きハンバーグとケーキを食べた。
夏休みもそろそろ折り返し。
宿題は美術の絵の下書きをしたくらいだ。