帰国前日、最後の買い付けで街を歩いているとき、「最後だからあの靴磨きのお兄さんに靴を磨いてもらおう」と思い、捜しましたが、見当たりませんでした。
歩いていると、他の靴磨きのおじさんが声をかけてきました。「靴を磨かせてくれ。朝から何も食べていないんだ」と言います。「そのパターンか」と思いましたが、「私だって何も食べていない」と言うと、「チア一杯飲んでいないんだ」と言います。
「あのお兄さんもいなかったし、靴はドロドロだし、ま、いいか」と思い、「いくらなんだ?」と聞くと、「まず靴を見せてくれ」と言います。これが手です。靴を脱がせてしまえば、人質をとったも同然です。あとは、「いくらだ?」と聞いても、英語が分からないふりをして磨き始めます。
一般に、街角で道具を前にして営業している靴磨き屋さんで20ルピーから30ルピーだと思います。しかも道具が揃っているので、綺麗に仕上がります。
それに較べて、リュックを背負って歩いている靴磨き屋さんは、観光客相手なので、道具やクリームの種類が少なく、良い色になりませんし、値段も50ルピーくらいの値段で言って来ます。
靴紐を解き始めたおじさんの手を握って、「いくらなんだ?」と聞くと、ようやく、予想どうり「50ルピー」と言いました。
「やはり高いな」と思いましたが、泣きそうな顔だったし、痩せていて「本当に何も食べていないのかも」と、つい思い、磨いてもらいました。
やはり予想どうり、こげ茶のクリームがなく、綺麗に仕上がりませんでした。
でも、「ま、いいか」と思い、50ルピーを払った気の弱い私の負けです。

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