放火への沈黙 「テロとの戦い」はどうした
2006年08月28日
(略)
卑劣な脅迫はいまも絶えない。
昨年1月、「新日中友好21世紀委員会」の座長・小林陽太郎氏(富士ゼロックス会長)の自宅玄関脇に、火のついた火炎瓶が2本置かれていた。首相の靖国参拝について「個人的にはやめていただきたい」と語ったあとだ。
この7月には日本経済新聞社の玄関に火炎瓶が投げ込まれた。昭和天皇が靖国神社のA級戦犯合祀に不快感を示したという元宮内庁長官のメモを、同紙が報じた直後である。
こうして靖国参拝について、異議を唱えにくい空気ができていく。それがテロの狙いなのだ。
ニューヨークのワールド・トレード・センターなどが襲われた「9・11」から間もなく5年がたつ。あれ以来、「テロとの戦争」を宣言したブッシュ大統領にこたえて、小泉氏は自衛隊のイラク派遣まで断行した。「テロとの戦い」は小泉時代のキーワードだったはずである。
だが、足元の「右翼のテロ」とは戦わなくてよいのだろうか。
官房長官や自民党幹事長などを歴任した政治家の非常時なのに、小泉首相にせよ、内閣スポークスマンの安倍官房長官にせよ、事件に憤る言葉も、取り締まりを強化する言葉も、国民に向けて一言も発しなかった。
折からのお盆休みで、小泉氏は公邸にこもっていた。定例の記者会見から解放された安倍氏は、総裁選の準備に忙しかった。だが、談話のひとつ、なぜ出せなかったのか。あれから10日余、加藤氏のもとにも見舞いや激励の言葉は来ないというから驚きだ。
情の有無を問題にしているのではない。国家の責任者として、これでよいのだろうか。沈黙は、テロを黙認するに等しくないのか。
よもや、この沈黙に意図があるとは思わない。だが、これでは「テロとの戦い」が泣くのである。
http://www.asahi.com/column/wakamiya/TKY200608280091.html
朝日新聞 論説主幹コラム 若宮啓文「風考計」より
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■テロとの戦いが泣く?
いろいろと突っ込みどころが多いコラムです。
まず一番の問題点は、具体的な対策が示されていない点です。
右翼テロを防止する為に何が必要なのか?
という視点が欠けているのです。
なぜ朝日新聞・若宮氏は具体的な方策を示せないのでしょうか?
この点について考察してみたいと思います。
■テロとの戦いとは何か?
まず大辞泉からテロリズムを調べてみましょう。
テロリズム【terrorism】
政治的目的を達成するために、暗殺・暴行・粛清・破壊活動など直接的な暴力やその脅威に訴える主義。テロ。
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テロリズムというのは「暴力主義」のことですが、一般的に「テロ」と言った場合は「個別の犯罪行為」も含まれるものと思います。その上で「テロと戦う方法」を具体的に分析すると以下の三点にまとめることができると思います。
(1)国家としてテロを容認しない姿勢を示すこと。
(2)テロを犯罪行為として処罰すること。
(3)テロを行う団体を監視(あるいは解体)すること。
日本国ではテロ行為を犯罪として取り締まっていますから、一番と二番はすでに実現されていると言えるでしょう。世論もテロを容認してはいませんね。
三番の「テロ団体の監視」については、集会結社の自由を定めた憲法との兼ね合いもあるので、テロが組織的に行われたという要件が必要になります。有名な例では毒ガステロの「オウム真理教」があります。ちなみにテロ団体を解体させる法律としては「破壊活動防止法(破防法)」というものがありますが、当時のマスコミは、オウム真理教に対しても破防法の適用を反対していました。
靖国問題に関しては、人が死ぬようなテロを行った団体というのものはありませんから、監視のしようがありません。加藤邸放火事件については、容疑者の所属団体が家宅捜査を受けましたが、団体としての関与は否定しています。そもそも休眠状態の団体ということですから組織犯罪の線は薄いでしょう。
このように具体的に考えると常識的なテロ対策はすでにとられていることが分かると思います。若宮氏がコラムの中で「テロと戦う具体的な方法」を提示できない理由がわかるのではないでしょうか。
■アメリカ版「テロとの戦い」との相違
若宮氏はおそらくこの点を勘違いしているものと思います。
「テロとの戦い」というのは、実は「テロ団体」「テロ支援団体」との戦いなんです。
アメリカの敵は「アルカイーダ」であり、それを支援する国家や団体なわけです。テロとの戦いを旗印として多国籍軍がアフガニスタンに侵攻したのは、アルカイーダを支援しているタリバン政権を打倒するためでした。
そういう意味で考えると、若宮氏が具体的な団体名をあげて、「○○という団体は危険な団体であるから取り締まるべきだ!」と主張するならば筋が通っていると言えるでしょう。
しかしながら靖国参拝を肯定しているのは多くの(過半数の)一般国民であって、特殊な団体だけが肯定しているわけではない。参拝を肯定する一部の人間が「テロ行為」を行ったとしても、それは「個人の問題」であって、参拝を支持する一般国民が犯罪に加担したわけではない。
ここがポイントになります。
具体的な団体名を挙げていない以上、若宮氏の意見は「参拝肯定派を取り締まれ!」と言っているに等しいわけです。言論機関にいる人間がこんな乱暴な主張をしてはいけませんよね。
■朝日新聞論説主幹の論理力
若宮氏は、テロによって「靖国参拝について、異議を唱えにくい空気ができていく」と書いています。これは明らかにウソです。
テロによって参拝肯定の世論が作られたのではありません。
参拝肯定の世論が強まる中でテロが行われたのです。
アンチ靖国の主張に怒りを感じているのは、テロを行った個人(団体)だけではありません。数千万人に及ぶ日本国民が(程度の差こそあれ)怒りを感じているのです。世論調査を見てみましょう。
首相の靖国参拝、「支持」53%…読売調査
読売新聞社は、小泉首相が終戦記念日(8月15日)に靖国神社を参拝したことを受け、15、16の両日、緊急全国世論調査(電話方式)を実施した。
首相の参拝を「支持する」は「どちらかといえば」を合わせて53%、「支持しない」は計39%だった。
それぞれの理由を聞いたところ、支持する人では「首相が戦没者を慰霊、追悼するのは当然」が35%で最も多く、「不戦の誓いになる」31%、「中国や韓国の反発でやめるのはおかしい」25%が続いた。
支持しない人では、「中国や韓国との関係が悪化」41%、「A級戦犯が合祀(ごうし)されている」27%、「政教分離の原則に反する」16%の順だった。
http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20060816it14.htm
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参拝を肯定する意見は「確信的」で強いものです。
一方の反対意見は、四割が「中韓との関係悪化」を上げています。逆に言うと「中韓の反対がなければ賛成」に回る層が相当含まれていまるので世論としては弱い。
アンチ靖国の主張というのは「理由はともかく中韓に譲歩しろ!」という、非論理的かつ売国的なものですから抗議が殺到するのはむしろ当然と言えるでしょう。
■日本国の世論
ちょっと考えると分かると思いますが、日本国の世論というのは、燃えない火炎瓶が置かれたり、無人の家屋が全焼する程度のテロで左右されるほど単純なものではありません。
仮にですが、
参拝肯定意見の言論人が襲われたならば、「テロを許すな!」という参拝肯定意見がさらに盛り上がることでしょう。
加藤邸が全焼してもアンチ靖国の世論が盛り上がらないのは、ひとえに加藤氏の言説や行動を支持する国民が少ないからです。
これは、朝日新聞他の全国紙、地方紙がアンチ靖国のプロパガンダを繰り返しても、アンチ靖国の世論が盛り上がらなかったことからもあきらかでしょう。
言論機関の人間であれば、言論で負けたことは素直に認めるべきだと思います。
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